……やっと、走り切った。
急に止まると心臓に悪いので、少しずつペースを落とす。それからゆっくり、一周歩いて、心臓を落ち着ける。
頑張って走って、汗を流したことで、ちょっとすっきりしちゃったような気がする。
でも暑い。すごく。
置いていた水筒を持ち上げて、飲んだ。
疲れた体に水が染み渡る。
もうここにいるのは私だけみたいだ。他は皆部活も終わってるんだろう。それに、休日だし。
しばらく休んでから荷物をまとめて、校門に向かう。
校門の前で、思わず私は立ち止まる。
「お疲れ」
優馬がいた。
「……よっ?」
「なぜ疑問系だし」
「…いると、思わなかったし」
怒ってたんじゃ、なかったっけ。
「いやぁ、それにしてもあいつのロングシュート、超かっこよかったよなぁ〜」
言葉だけ聞くと褒めてるように聞こえるのに、声にとげとげしさがあった。
「うっ…ごめん」
「許さない」
「ごめん」
…いつもなら、あんなミス、絶対しないのに、と私はさっきと同じことを心の中で呟く。きっと、昨日の優馬のあの変な言葉のせいだ、と責任転嫁しようとする自分自身の頭を叩く。
「…10周、疲れた?」
「え? うん」
「頑張った?」
「もちろん」
「じゃあ、許す」
あれはペナルティだから、と優馬は付け足す。
「本番ではミスすんなよ」
「当たり前じゃん」
「…てか、なんであんなバカみたいなミスしたの? 昨日のあれ、気にしてる?」
バ、バカって…。
「気にしてたけど、あんなミスするとは…。まぁ、自分のせいなんだけどね」