「だっ、大丈夫?」
「平気平気。僕元々濡れたい派だったし」
笑いながらそう言う近藤くん。寒くないのかな。大丈夫なのかな。だって、2月だよ?
「ごっ、ごめんね! 私が半分こしようって言ったから…」
バシャーン! という大きな音で、私の声は全部かき消される。今度は左の下の方にいた人の方に水が飛ぶ。
「なんだかこれ、水浴びしてるみたいじゃない? 違うか。イルカに水浴びさせてもらってるのか」
近藤くんがそう言って、また少し笑う。ツボに入っちゃったみたい。男の子のツボって、よくわからない。
「水浴びさせてもらってるって…」
くす、と少し笑えてくる。
「近藤くん、着替えって持ってきてる?」
「あるわけないじゃん」
近藤くんがケロリと答える。
「それに、着替えるところもないし。しょうがないよ。…うわ、これ海水だ。お母さんに怒られるの確定したわ」
そして30分ほどしてから、イルカショーは終わった。
近藤くんが濡れているのが気になって、ハンカチで拭いていると、「…っ、ほっとけば乾くから気にしないで!」と、大袈裟なくらい拒否されてしまった。…ハンカチ、そんなに汚く見えたとか? と少しショックを受けた。
そのあと、餌やりなどができるところに行ったり、イルカショーで濡れた人達の観察まがいのことをしたりして楽しんだ。
近藤くんは「僕と同じこと言ってるし」なんて笑ってたけど、私は濡れさせてしまった罪悪感に駆られてた。