デート。

「そっか。デートだったね」

「……ほら、忘れてるぐらいじゃんか」

 近藤くんがぼそりと何か呟いたことに、私は気づかない。

「忘れちゃうね。なんだか、楽しくて」

「…っ、そうだね」

 一瞬、近藤くんが驚いたような顔をした気がした。

「楽しいんだ……」

 それから、少し嬉しそうにする近藤くん。呟く感じだし、周りも騒がしくなってきたからよく聞こえないけれど。

「で、半分ずつ被るの? 結局」

「えっ…、うーん、どうしようね。あっ、始まっちゃう! 破ってる時間ないし、被っちゃお!」

「え……っ」

 バサッ…と雨ガッパの音。

 透明なそれは、思ったよりもずっと大きかった。

「これなら半分こでも全然平気そうだね」

「そうだね」

 良かった…と私は少しだけホッとする。あんまり近づくと、バレる。今、私心臓がものすごく速くバクバク鳴っていることが。バレてしまう。

 ショーがスタートする。始まった。前にもここに来たことはあるのに、なんでこんなに楽しいんだろう。

 イルカのジャンプ。ものすごく高い…と思ったら、落ちて来た時の水が全部こっちに飛んできた。右の下の方に。つまりこっちに。結構、痛いかも。

「ははっ」

 近藤くんは笑ってる。

 私は全然濡れなかったけど、近藤くんはびしょ濡れ。半分こ、近藤くんの方が背が高いせいでうまくできていなかったのかもしれない。