「お待たせ」

 そう言って、近藤くんが隣に来た。

 笑いかけると、笑い返してくれた。

「そんなに待ってないよ」

「でも、少しは待ったわけだし。日名瀬さん、これ使う?」

 雨ガッパを見せて、聞いてくる。

「どうせなら濡れちゃおうかな、なーんて」

「じゃあ僕も濡れちゃおうかな、なーんて」

 近藤くんが私の口調を真似してそう言う。

「……」

「…ふはっ」

「「買ってきた意味ないね」」

 そう、同時に言った。

 それが面白くて、楽しくて。

 ふっ、と2人同時に吹き出して笑う。

「やっぱり使う。せっかく買ってきてもらったし」

「僕はいいかな。一回しか買えなかったし」

「売り切れてたの?」

「うん。最後の一個がそれ」

「じゃあ、いいよ。私使わない」

「なんで? 使うって言ってたのに」

「買ってきてもらったと思ってたからだもん。近藤くんが使いなよ」

「…じゃあ、半分こね」

「うん。それ、いいね」

 これ結構1人で使うには難しいもん。

「じゃあ、僕が破るね」

 …うん?

「やっ、破るの!?」

「うん」

「固そうだし、無理じゃない?」

「やってみないとわかんないし、半分こするなら破らないと」

「ええ、私は半分ずつ被るんだと…」

 ……ん? 半分ずつ? それって、必然的に近くならない?

「だって、それは日名瀬さん嫌でしょ? このデートだって……」