「わっ、予想通り結構混んでるね」
「だね。でも、思ってたほどではなくて安心かも」
「そう?」
この水族館には、イルカショーがある。シャチやアシカのショーや、餌やり体験もできたり。だから、わざわざ遠出してまでここにした。…ずっと、一度近藤くんと来てみたいと思っていたからっていうのもあるけど。
「前の方と後ろの方、どっちがいい?」
「どうせなら、僕は前の方がいいかな」
「濡れちゃうかも。いいの?」
「あ、それ寒くなりそう。でも、迫力ある方がいいじゃん。カッパ売ってるかな」
「そこで売ってる。私も買おうかな」
「ポップコーンあるかな?」
「好きなの? …って、映画館じゃないんだから」
「へへ」
無邪気に笑う近藤くん。思わず、ドクンと心臓が大きく脈を打つ。
そのあと彼ははっとしたような表情になってから、「何か買ってくる」と小さく言って、そのまま行ってしまった。
…行っちゃった。
ああ、なんだか、夢みたいだなぁ、なんて思う。
花は、私が好きな人いないって勘違いしているみたい。だから断られてもさほどショックを受けない近藤くんを罰ゲームの相手に選んだんだって。
違うのに。好きなのに。
近藤くんは、いつも私が困っている時に1番に気づいてくれて。助けてくれて。
だから好きになったのに。