「……1人分返すなよ。払った意味ないじゃん。僕が払いたいだけだから」
「…じゃあ、遠慮なく」
そう言うと、近藤くんが「ふはっ! 遠慮なくって! めっちゃ遠慮してたじゃん!」と吹き出す。
…そうかな。誘っておいて奢ってもらうなんて、酷くないかな。ずるくないかな。
…てゆーか、近藤くん、その笑顔はずるくない?
それに、髪を切った分いつもよりよく表情が見えて、より魅力的に見えちゃうし。
——髪、切ればいいのに。
そう思ったことがあった。初めて見た時だ。第一印象。
でも今は私、真逆のことを思ってる。
——髪なんて切らなければ、誰も近藤くんのことに気づかなかったのに。
——もっと早く切っていれば、皆近藤くんのこと“モサ男”なんて呼んだりしなかったのに。
結局私は、どっちなんだろう。