うわ、色んな人に見られてるよ。気づいてないの? 近藤くん…。

 近藤くんは、お店の中に何か目ぼしい物でもあったのか、じっとお店の中を見ている。多分、気づいているのは私だけだ。早く声をかけないと、どんどん待たせることになってしまう。

「誰か待ってるの?」

 私は、それが自分にかけられた声だと気づかずに近藤くんを見つめていた。近藤くんが、急に振り返ったと思った時、「ねえ聞いてる?」と耳元で、小声で言われて、びっくりして振り返る。

 …み、耳元で。

「可愛いね。それともナンパ待ち? なんちゃって」

 彼らの声が、普通の声の大きさに戻る。

 …これは、ナンパ?

 いつもは、花(はな)やなずなと一緒にいるから声をかけられるけど、なんで?

 私、そんなに可愛くないはずでしょ?

 その2人のうちの1人が私の腕を掴む。

 その瞬間、ゾワッと、悪寒がした。




 ——嫌だ。この人達、ニヤニヤしてて、すごく怖い。

 助けて、誰か。

 誰か——花、なずな…。だめ。2人はここにいない。誰か、…近藤くん、気づいて。

 声が出せない。周りの人は、みんな見て見ぬフリをしてる。巻き込まれたくないのだろう。

 嫌だ、誰か。近藤くん…。