深川舞。中学生の頃から現在に至るまで、倫子をいじめつづけている、倫子にとって最大の天敵である。
もちろん、今回、劇のメンバーに倫子を引き込んだのも、舞台の上で倫子が顔を真っ赤にして、四苦八苦する様子を見たいが為であって、倫子の為などでは一切ない。
倫子は、クラスメート達が教室から出ていった後も、席に座ったままぼう然としていた。舞は、その様子を眺めながら独りほくそ笑み、教室を後にした。


午後五時半。倫子は、学校の近くの岬の先端に独り立って、夕日を眺めていた。そして、夕日に向かって、できる限りの大きな声で叫んだ。

「私は、あなたよりも、この街よりも、恥ずかしがりやじゃないわ~っ!顔の赤さだって負けるわ!でも…」

それだけ叫ぶと、そばにある木でできたベンチに座り込んでしまった。