それを見た要は、強い衝撃を頭に受けた感覚に陥った。そして、しばらくしてからニコッと笑うと、

「…そうだ。そうだぜ!倫子ちゃんは今日まで一生懸命やって来たんだ。この劇、何としてでもハッピーエンドで終わらせないとな。
あの子のためにも…そして、俺の…」

要は、一呼吸置いて、携帯電話をバトン替わりに、体育館の真ん中の通路を舞台めがけて、全力疾走で駆け抜けていった。

「俺のためにも!」

その頃、倫子に、舞のとどめの牙が襲いかかろうとしていた。

「さあ、シンデレラ…いや、りんご!この展開をどうさばいてくれるのか・し・ら…ねえっ!」

最後の舞の気迫で、倫子は緊張の糸が切れ、ふうっと真後ろに倒れていった。

「やった!」

しかし、その時、

「がしっ!」

と、倫子の体を支えた者がいた。それを見た舞は、驚いて言った。

「だっ、誰よあんた!」


「…えっ…」

倫子も、倒れそうになっていた自分を支えてくれた人物が誰だか分からず、そ~っと振り向くと、目をまるくして驚いた。

「か、要君!」