「最後の最後で、幸せを手に入れるのがシンデレラストーリー。
でも、これはあくまで『アドリブ劇』だということを、わ・す・れ・ちゃあだめよ！」

倫子はぞっとした。こういう場合、後で舞に何らかの嫌がらせを受けるのがパターンとなっていたからである。舞は、そんな倫子の顔の表情を読み取ってクスッと笑うと、倫子から離れた。
劇が演じられるまでの控えの間、出演者達は、めいめい発声練習をしていた。その片隅で、倫子は昨日の夜に、要から届いた着信メールを見つめていた。

―絶対、観にいくから、頑張って、倫子ちゃん！―

倫子は、携帯電話を胸に当て、自分に言い聞かせた。

―絶対、成功させてみせる、あの子がどうでてこようとも！―

その時、校内放送が流れた。

「…ご来場のお客様に申し上げます。午後一時半より、陽光祭の目玉、アドリブ劇を体育館において上演いたします。多数、お誘いの上、観劇のほど、お願い申し上げます。」