倫子は、要に全てを伝えた。学校での、自分の周りからの印象、舞の存在、そしてアドリブ劇の事。
倫子は、要にアドリブ劇の資料を見せた。倫子が、学校から手渡されているその資料には、おやゆび姫・シンデレラ、日本の古典からはかぐや姫といった、計三つのお題がある。この中から当日、役柄も含めてどれが当たるかは分からない。
だが、要は言った。

「どうせなら、主役を意識してお姫様役一本で絞って練習しよう!」

その日から、二人はこの岬で毎日、放課後集まって練習を行った。
初めはぎこちない演技の倫子であったが、顔を赤らめながらも必死で取り組んでいく内に、少しずつ、少しずつ自分の思いを口に出せる様になっていった。
演技の練習は、夕日に照らされてできる、二人のシルエットが、夜のカーテンが下りて見えなくなるまで毎日続いた。