要は、本当に悪い事をしたと思った。大丈夫じゃないのは今の倫子を見れば分かる。
今の様子から、とてもデリケートな女の子なのだと要は感じた。
要はそっと倫子から携帯電話を受け取ると、ポケットからハンカチを取り出し、倫子に手渡した。


…そこからさらに何分経ったかは分からない。特にこれといった携帯電話でのやり取りも無く、二人は、適度な所で家路に着いた。
その晩、倫子は机の椅子に座り、別れ際に要から言われた言葉を思い出していた。

―話がしたかった、と言うより、話を聞いてくれる相手が欲しかったんだ。だから、君さえ良ければ…―

倫子の左手には、一枚の小さな紙が握られている。倫子は、しばらくその紙を眺めていたが、深呼吸をした後、その紙に書かれてある文字を携帯電話に打ち始めた。