如月 蒼人(キサラギ アオト)

今日は東校との合同練習だっけ。
思いっ切り寝坊したじゃん。

もう学校についたころには昼の休憩だった。
そういえばあの生意気猫にごはんやんないと。

俺にしか懐かない猫。腹すかせてないといいけど。

いつものとこに行ったら先約がいた。
見たことない子。それに生意気猫もいるし。
あの猫から近づくなんて変なの。

離れて様子を見てると物音に驚いて猫がその子の指を噛んだ。
でもその子はそれでも猫のこと撫でてる。

「大丈夫だよ、怖がらないで。」

その子の言葉がなぜかあったかく思えた。
噛まれたことなんて忘れたかのように戻っていく。

午後の練習に入るとその子は手当てもせず練習に参加。
馬鹿なのかそれとも鈍感なのか。
でもその子はほとんど人と会話をしてない。

猫にはあんなに話してたのに。
怪我のこと言い出せないだけとか・・・・・なわけないか。
さすがにね。

「キサラギ先輩。やっと来たんですね。」

キラキラした目で俺を見る後輩の榊原 進(サカキバラ ススム)
いつもテンション高くてうるさい。

「ねぇサカキ、あの子だれ?」

「あの子は東校の1年のカイザキ マヒロ。推薦もらったそうですよ。」

「へーーーーー。」

あの子の練習する様子を観察する。
無駄のない動きで細そうなのに力量もある。
それにあの子の剣道は綺麗だ。


人を魅了することのできる剣道。


その子は東校の部長に呼ばれ、打ち合いの練習に入った。
今日会ったばかりなのになぜかその子を目で追ってしまう。

変な俺。

彼女のときどき見せる痛そうな表情。
いつもなら他人のことなんてどうでもいいのに。



身体が勝手に動いてた。