私は頬を膨らませて、彼を軽く睨む。

「天沢のせいで体温が一度くらい上がったじゃん」

「…?わ、風邪ひいた?立ち話、よくよく考えると結構長かったよね?体冷えたせいかな。ごめん」

「…はあぁぁぁ」

私は脱力しながら、大きなため息を溢した。

彼はますます意味がわからない、といった様子で首を傾げる。

どうやら彼は無自覚ド天然だったらしい。

「もー、天沢ってあれだね。冗談通じない感じの、ドがつくほどの真面目」

「えっと、ごめん?」

「これも褒め言葉ですよーだ」

頭にはてなマークを浮かべてきょとんと首を傾げる天沢は、いつもより幼く見える。

さっきの爽やかな王子様と同一人物とはとても思えない。

なんだか教室では決して見れない、彼の一面を知れたことに私は思わず頬を緩めた。

「帰ろっ!送ってくれるんでしょ?」

罪悪感も申し訳なさも全部投げ捨てて、天沢に微笑みかける。


きっと、天沢が望んでいるのはそれだけだから。

本当に償いたいと思っているからこそ、私は彼の隣を歩かせてもらうのだ。

「水瀬さん…」

天沢は意外そうに目を丸くしたが、すぐに世界中を幸せに満たすような、と言っても過言ではないくらいに優しい笑みで頷いた。

いつものことなのに、ドキッ、と心臓が音を立てる。

さっき、あんな風に接近されたからまだ体に熱が篭っているのかも。