「水瀬さん…?」

私が一向に返事をしないせいか、天沢が不安そうに瞳を揺るがせて私の名前を呼んだ。

「…その、男らしくない、とはわかってるんだけれど…、僕らの高校ってバイト禁止だし、お店で接客とかは無理だから…これくらいしか出来ることなくて」

引いた?と言わんばかりの不安げな表情。

天沢は俯きながらも、私の様子を窺っている。

さらさらの髪からは色素の薄い瞳が覗いていて、それこそ星のようだ。

「そんなわけないよ。凄すぎて驚いただけ。いやーそれにしても綺麗すぎない?センスと器用さの塊じゃん」

私が本心を口にすると、天沢はほっと安堵の息を吐いた。

個人的には、そんなに気にすることではないと思う。

寧ろ、学校で天沢が『刺繍が趣味』とか言ったってファンが喜ぶだけだろう。

「よかった、初めて人に話したから。水瀬さんにはいつか言おうと思ってたけれど」

天沢も私の向かい側の席に座って、嬉しそうに微笑む。

何度見ても天沢の笑みは、破壊力が尋常じゃない。

それに、なんだか…天沢の初めてになれたことが嬉しかった。



天沢のこと、私すごいと思っているんだよ。

私の中で、天沢は太陽だ。




でも、もちろん私はそれを言葉にできるほど素直ではないので、代わりにそっぽを向いて答えた。

「別に人に言っても良いんじゃない?寧ろ、演劇部とか美術部とか喜んで勧誘してくると思うよ」

照れ臭いから天沢の顔を見ずに言ったのだけれど、反応が気になってしまって横目で様子を窺う。

すると、天沢の透き通った瞳とばっちり目が合ってしまった。

穏やかな笑みは私の心境を全て見据えられている気がして、居た堪れない気持ちになる。

照れ隠しも天沢には通じないのだろうか。

それは相当恥ずかしい。