「今日はどこ行くとか決めてんの? そういや愛島さん今日有給とってるから外で待ち合わせすんのか」
「ああ、昼間はお前の嫁さんと会ってたからな。なんか新宿に新しく店ができたとかでそこに行きたいって」
定時の鐘がなる。さっさと荷物をまとめてパソコンを落として涼嶋と並んでオフィスをあとにする。
「今度二人もうちで飯でも食おうぜ」
「ああ、じゃあ邪魔しようかな。繁忙期が終わればだけど」
「ほんとにそれなんだよな」
山手線ホームへの階段を上っていく涼嶋に軽く手を振り、色人は中央線へと足早に進む。
発射間際の高尾行きへ乗り込んで流れる夜景に目線を投げた。
結局、もう少し、を重ね続けて二年も経ってしまったし今更彼女を置いていくほうが無理だなとさえ思う始末。
二人とも病状は悪化も改善もせず、いまだに月に一度は瀬戸口と顔を合わせている。
問題は山積みだし、無いといえば無い。あの日の宣言通り、色人は満の声であるし、満も色人の目であるからだ。
人ごみを縫って東口改札から地上に出る。ライオン広場にまだ彼女はいない。
アルタ前の横断歩道の向こう側にそれっぽい人物を見かけて歩道側に歩いていたら視界の右端が大きく曇った。
刹那。
キイイッ、ガンッ、ガシャンッ、バリンッ