「初めまして、担当医の瀬戸口です」

「先生、うちの子はどうなってしまうんですか」

「落ち着いてください、先ずは少し話してみましょうか。こんにちは」

「こんに、ちは」

「お名前は、愛島満さんで間違いないですか?」

「はい」

 満を刺激しないように、瀬戸口医師は満に質問を続けた。

 はいかいいえでしか答えなかった満も少しずつ答えるようになった。

 その間約三十分。短いはずのたかだか三十分はずっと緊迫し続けていた。

「この二人は満さんのお父さんとお母さんです、わかりますか?」

「わかり、ます、わたしさっき、ふたりにひどいことして」

「思い出せたならよかった、まだ早い段階だったからよかったですね、満さん、あなたがいろんなことが分からなくなってしまうのは体が助けてほしいよーって信号を出してるからなんです」

「しんごう…」