「高橋さんっていつもスケジュールぎっちぎちっっすよねー」
「好きでこんなんじゃない、クライアントに指名されてるだけだ。なんせ人気者だからな」
「俺も言いてえなあ、それ」
後輩と軽口を叩いて氷の溶けかけたアイスコーヒーを流し込む。
十月なのに少し寒い。ホットにすればよかったとジャケットを羽織りなおした。
今日は時間があるからゆっくり昼食が採れそうだと財布を持って咳を立つ。
花形、なんて言われているらしい第一営業部だけれども、毎日ひっきりなしに電話と慌ただしくしている音ばかり聞こえてくる。
一応社則では、昼休憩は十三時から十四時らしいが、営業部の人間がその時間に昼を採っているいるところを入社してから見たことはない。
外回り中のほうが、コンビニ飯であっても時間通り食事ができているかもしれない。