◇
「忘愛症候群?」
「ええ、お嬢さんのは特に、極めて珍しい症状です」
最初は小さな違和感だった。
幼い満は感情表現が豊かな子供で好き嫌いも多かった。
兄や弟とも激しく喧嘩をするお転婆でそれは小学生になっても変わらなかった。
ある日、父親が珍しく早く帰ってきた。子供たちにケーキを買って。
兄はチョコレートが、弟はシュークリームが、そして満は真っ白なショートケーキが好きだと知っていた父親はわかりやすくその三つをきちんと選んできた。
「ほら、お前たちが好きな奴だぞ」
「わっ、やった、俺チョコ!」
「ねえちゃんショートケーキだろ」
「わたし…わたしってショートケーキ選んでたっけ?」
「何言ってんの、好きだろこれ。はい」
「…ありがとう、翔太。お父さんも、買ってきてくれてありがとう」
翔太に遠慮したのかな、お姉さんになったのかもしれないなあ。
それにくらべて樹は長男なのにまだまだ子供だな。その日、子供たちが寝付いてから夫婦でそんな話をした。
最初はその程度の歪だったのだ。
「忘愛症候群?」
「ええ、お嬢さんのは特に、極めて珍しい症状です」
最初は小さな違和感だった。
幼い満は感情表現が豊かな子供で好き嫌いも多かった。
兄や弟とも激しく喧嘩をするお転婆でそれは小学生になっても変わらなかった。
ある日、父親が珍しく早く帰ってきた。子供たちにケーキを買って。
兄はチョコレートが、弟はシュークリームが、そして満は真っ白なショートケーキが好きだと知っていた父親はわかりやすくその三つをきちんと選んできた。
「ほら、お前たちが好きな奴だぞ」
「わっ、やった、俺チョコ!」
「ねえちゃんショートケーキだろ」
「わたし…わたしってショートケーキ選んでたっけ?」
「何言ってんの、好きだろこれ。はい」
「…ありがとう、翔太。お父さんも、買ってきてくれてありがとう」
翔太に遠慮したのかな、お姉さんになったのかもしれないなあ。
それにくらべて樹は長男なのにまだまだ子供だな。その日、子供たちが寝付いてから夫婦でそんな話をした。
最初はその程度の歪だったのだ。