「ねぇ……どこ行くの…」

「雪乃が行きたいところ」

「って、どこなの?」

「って、どこなの?」

「私が聞いてるの!」

「俺も聞いてるの!」


運転しながら横目でチラッと見てきた賢心と目が合うと、悔しいけれど思わず笑ってしまった。

高速道路を走る車は、私の住んでいる方向へ
向かっているのだけは分かる。


「……おかえり、賢心…」

「ただいま、雪乃。」


本当は会えて凄く嬉しかったんだ。

生まれた時から隣の隣に住んでいて、
いつも私のそばをくっついて歩いて、
幼稚園から高校までずっと一緒だったけど、
賢心は優しくてカッコ良くてみんなから
人気があって……私なんか釣り合わないと思って、だから私はあの時、頑張って身を引いたんだよ。


「雪乃、怒ってる?」

「…うん、少しね‥……」

「雪乃を置いて留学したから?突然帰って来たから?……それとも、迎えに来たから?」

「‥……」

分からない…
分からないけど、涙が溢れてくるのは分かった。