賢心が自分の部屋に戻り夕食を作っている間
私はシャワーを浴びながらふと手を止め思う。

「はぁ………もっと出来る女にならないとなぁ…」

甘えてばかりで自分は何もしてあげられていない上に、心配までかけている事に嫌悪感を抱いてしまう。

そんな気持ちを隠しながら急ぎ気味で汗を洗い流し、隣の部屋へ向かうと…早速お叱りを受ける事になる。

「髪の毛濡れたままだろ!」

「ぁ、うん。だって急いで来たから」

「風邪ひいたらどうするんだよ。そこ座れ」

大人しくソファに座り、ドライヤーを持ってきた賢心に髪の毛を乾かしてもらう…

病気の事がオープンになった以上
ある程度の過保護は覚悟していたけれど、
これから先が思いやられそうだった。

「…クシュン!!」

「ほら!」

「1回くしゃみしただけで怒らないでよー!」

「怒っても言うこと聞かないだろ」

「ちゃんと座って乾かしてもらってるもん」

「なんだぁ?偉そうだな!くしゃくしゃにしてやる!」

「わぁ!ちゃんと乾かしてよぉ!」

「ごめんなさいは?」

「ごめんなさぃー!!」

「ハハハ!俺がいないと髪も乾かせないんだな」

「……賢心がいないと、生きていけないかも…」

「よしよし、いい子だな」

髪を撫でる賢心の手が心地よくて、
その手でずっと、私を掴まえてて欲しいと願う。