「雪乃、今日もお迎え来てるよ」

「え?」

ニヤリと私を見る綾香の言う通り、リハビリ室の入口でニヤリと微笑むのは、主治医の賢心……

「2人でそんな顔しないでよぉ!」

足を引きずるように賢心の元へ向かい、
大人しく後ろを付いて歩く。


「リハビリ室まで来なくても、逃げないよ…」

「診察室から逃げようとしたくせに」

「……」

そして車の中でも私は静かに俯いたまま。
部屋の前まで来ても何も言わずに玄関を開けて
中へ入り鍵を閉め、その場で泣いていると…


ガチャ!

合鍵で入ってきた賢心はすぐに私を抱きしめた。

「どうして鍵開けるの……」

「どうせ泣いてると思ったから」

「…どうして分かるの」

「雪乃の事は、何でも分かるから」

「……じゃあ、今…」


私の頬に両手を添えると、キスをして……
今、してほしかった事も全部分かっていて、
そのまま私達はベッドの中にいて、
私の体が感じ取る微細な所まで分かっていて、
そばにいるだけで気持ちよくて…


「…ねぇ、どこにも…いかないでね」

「その言葉、そのまま雪乃に返すよ」


消えてしまうかもしれない恐怖を紛らわすかの
ように、お互いを求めて愛しあった。