人を待たせていると思うと、着替えも焦る。

「帰りもイケメンと一緒だなんて羨ましいなぁ」

「そんなに喜んでいられるほど余裕なんてないんだけどね……じゃ、お先!」

「お疲れ~楽しい夜を~♪」

綾香に見送られて駐車場へ急いでいた私は、
職員通用口を出た瞬間、背中を叩かれた様な衝撃を感じ咄嗟に胸を押さえてうずくまった。

「ぅ…何、これ…はぁ、はぁ…」

何とか呼吸を整えて立ち上がろうとした時、

「雪乃!!」

賢心に見つかってしまった。

「大丈夫か!?」

急いで駆け寄ってきた賢心は私の体を支えながら
バイタルを確認しようとしていたので、私は慌てて立ち上がった。

「ごめん!躓いて転びそうになっただけ…
大丈夫だから。遅くなって、ごめんね」

必死に言い訳をしてみるけれど、

「……子供じゃないんだから‥…気を付けろよ」

少し怒っているようにも見えた賢心の顔が、
とても悲しかった。

こういう事なんだ……心配かけたり悲しませたり。

私は怒られて落ち込む子供みたいに俯き、
手を引かれて車に乗せられた。