「言ってない。」

「言った!全校朝会の帰り!」

「うるさい。声には出してないから言った内には入らない。」

「口パクも同じだもんね」

「そもそもアホにアホって言って何が悪いの」




ムキィイと猿のように唸る私を横目に鼻で笑った花先輩は、また映画へと黒目を戻す。横からその端整な顔を眺める。



一切の無駄を剥ぎ落とした繊細な輪郭に、長い睫毛。耳の形から首の筋ひとつまでもが綺麗。




「歩く花束…」



明日菜の言葉もあながち嘘ではない。




「は?頭大丈夫かお前。」




見た目だけならば。



「………喋る毒花」

「ごめんごめん頭はもう手遅れだった。」

「むがああ」

「せめて日本語でどうぞ」