すれ違う、その狭間。




「(あ、ほ、づ、ら)」




口パクでそう言った花先輩は、左の口端をきゅ、と持ち上げてシニカルな笑みを残したまま私の横を通り過ぎた。








「花?早く教室戻ろうよ」

「うん」



明日菜の声に引っ張られて振り向いていた身体を元へ戻す。廊下のずっと先に、彼の後ろ姿。



私の視線を追いかけた明日菜の目が、彼を捉えただけでうっとりと垂れ目になる。




「花先輩って、カッコイイっていうか、なんかもう、見目麗しいよね。歩く絵画。いやもはや歩く花束」



はあ、なんて感嘆の息を零し、明日菜が私の顔を覗き込む。