陽菜は一旦口を閉じると、ソルを悲しそうに見つめる。

「……晴輝はね、学校でも家でもあまり笑わなかったんだ」

「え?」

陽菜の言葉に、ソルは驚いた顔をした。

「……ここからは夏樹さんから聞いた話になるんだけど……晴輝が12歳の時、夏樹さんに連れられて近くにあるサーカスを見に行ったんだ。そのサーカスで、晴輝は笑顔になったんだって…………それからなんだよ。晴輝が良く笑うようになったのは」

そう言って、陽菜は微笑むと僕を見つめる。僕が首を傾げると、陽菜は「……瑠依、ジャグリングして」と言った。

「え……?」

「……晴輝、瑠依のジャグリングを見て『懐かしくなった』って言ってたから……もしかしたら、記憶を思い出せるかもしれない」

陽菜の言葉に、僕は頷くとボールを3つ作り出すとジャグリングを始める。

色んな技を披露した後、片手に3つのボールを乗せると礼をした。

ソルの方を見てみるとソルは静かに泣いてて、僕と目が合ったソルは、優しく微笑む。

「……どうしてかな。胸が、温かい……そうか……俺は……瑠依のパフォーマンスを見た時、誰かを笑顔にしたいって初めて思えたんだ……こんなに楽しいことはなくて……同時に陽菜と夏樹兄と遊んだことを沢山思い出して……俺の人生は、辛かったことばかりじゃなかったんだって……瑠依のパフォーマンスを見て思って……もう少し生きてみたいって……なぜか思えて」