ふと、肩を叩かれた。
授業が終わり帰宅しようと玄関に着いた時のことだった。
「きょうこっ」
名前を呼ばれ、咄嗟に振り向く。
ほっぺになにかが刺さった。
「ひっかかったな」
私を呼んだのは、明里だった。
ところで、その明里さんの指が私のほっぺにぶっすりしているのですが。
「呼んだ?」
「うわっ、無視して話進めた!?」
目で無言の圧力を掛けると、明里はニコニコ笑顔のまま指を離した。
「この後空いてる?」
「空いてるけど?」
予定を聞いてきた明里に、私は自然と答える。
サプライズ好きの明里のことだ、きっとなにか用意してくれてるんだろう。とは口に出さないけど。
「今日は楽しみだね~、何がとは言わないけどっ」
そう言う明里の笑顔が眩しい。
今日は私の誕生日だから、明里が色々考えてくれてるのだと思うと、たまらなく嬉しかった。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、明里はニコニコとしている。
我ながら良き友人を持てたなって思う。
「ほら、早くっ」
急かす明里に駆け寄る。
大好きな友人と、なんだか誇らしげな思いを胸に、一緒に玄関を出る。
その瞬間、暖かい光に包まれた。
不安は無く、ただただ安心感で満たされる。
幸せを噛み締めるように、私は目を閉じた。