『ザザッ!、こんにちは!!』
ホンマ、それ、急にやった。
「!!!」
「こんにちはー。」
こっからは
見るからに
急な石段の下りなんを、
その先
藪から棒に
モンの凄い勢いで駆け登って
きた人!!
東屋で一服するうちらに
軽快なあいさつしはって、
リンネさんと、チョウコさんは
打てば響くように
あいさつを返しはった
けど、
「えろー似てはったわ。」
うちは、そないなこと
口にしてた。
ここまでようよう、
登ってきたのんを
今度は一旦下ると
リンネさんが
何もなかった様に
教えてくれるんやけども
うちは、さっき
勢いよく
走り抜けた人の後ろ姿を
ついつい
ながいこと見ててしもた。
「うあー。下りって、
あんまし、腰によおないやん。
ちょお、サラシ巻かせ
て。あたし、腰痛持ちやねん 」
チョウコさんが隣で、
装束のお腹をめくっりはって
そないなモン、よう持ってはる
なあとかリンネさんに
言われながら
慣れた所作で
サラシを巻いてはる。
なんとなしに、
チョウコさん祭りやってはるん
やなあって感じた。
お茶飲んで一服したら、
ぐんぐん坂道を下って行く。
そしたら
だんだんなんや
暗くなって霧が
懸かりはじめたから、
山の天気はよう変わる。
「この辺りは、上皇の御幸に
しぶしぶ連れられた歌人が、
どしゃぶりの雨の中で
無理から歌を詠まされたのが
有名なんですよ。霊山の雰囲気
がまた戻ってくる趣ですかね」
リンネさんが、そない言いはる
けど確かに
山道はどんどん下るほど、
小さいお社さんがでてきて
燈明がオレンジに
薄暗い霧を照らし
はじめんのやわ。
石の仏さん、あ、
『サトリ』さんやね
がえらい多くなってきたわ。
なんやろかちゃう雰囲気に
感じるんよ。
「昔はよくヒルがこの木から
ぼたぼた落ちてきたそうです。
ここらへんは湿っぽいから。
これでも、戦後に木が切られて
山自体が乾いたからヒルの数も
マシみたいなんですけどね。」
お陰で、昔より霊気が薄れたって
これでですのん?
「今でも、ダルでそうやわ。」
うちが言うたら
リンネさんが、
「ここは出ますよ。」
いうはるから、
うちは残してた『ハララ』を
ぱっと食べとくと、
チョウコさんは、
「それって何のオマジナイなん」
て、目ぇ、まん丸にしてはった。
そやから
「チョウコさんの、サラシと
おんなし、転ばぬ杖やよ。」
って、答えとく。
そこから
ちっさいけど
ええ感じの小川に沿って、
その岸を左右いったりきたり
して進む。
「このサラシな、
リュウちゃんのモンやねん。
祭でよう、巻とったヤツなん」
チョウコさんが
道に出てきた
お石お不動明さんに
3人で 真言を唱えたら
いきなり言いはった。
出てきたお不動さんは、
野趣あってちっさいけど
妙に存在感を漂わせてはる。
「リュウちゃんて、旦那さん?」
コーヒー号泣ん時に
聞いた名前やけど、チョウコさん
は何もいいはれへん。
「お祭かぁ。ハジメくんに、
旦那を紹介されたんも、お祭
やったさかい、お祭りいうんは
なんなと思い出あるもんよね 」
そう、
チョウコさんに相づちうつ
ように答えて、
察して頷くリンネさんを前に
半分壊れかけの橋を渡ると、
久しぶりに
アスファルトの林道に
ようやく出たー。
ここが
色川辻らしい。
やっぱり
林道に出ると、人の気配が
急にしてくるもんやね。
ホッとするわ。
そやけどまた、
小川の横を
歩いて林道をもう一度横切ると
再び登りの古道やわ。
又登って、登ってして行くと
もう一度
林道に出て、こっからしばらく
アスファルト林道を
迂回ルートに歩んやて。
『こんにちは!!』
すると
後ろからまた、凄い勢いで
挨拶する
若い青年に追い越されたん。
「あ、、」
つい、
さっき峠ですれちごうた
男の人を思い出してもうたわ。
「なあ、どないしたん?」
チョウコさんが振り返って
うちを見ながら
歩いてはるから。
「いやなあ。別に、亡者
ゆーても幽霊に会うわけや
ないんや、思ってただけやわ。」
川の横っちょ
アスファルトの道路に、
気が緩んで歩く。
「うえ!キコさん、それって、
旦那さんのユーレーみれたん?」
いつの間にー!!
水臭いやん、言うてよ!って
チョウコさんが喚くから
「もー!チョウコさん、体力
余ってるんですね!なら!
休憩はいりませんか?!」
ってリンネさんが
キレた。
どうも
ここの緩やかな道を行くと
地蔵茶屋跡らしい。
「「休む!休みます!!」」
うちと、チョウコさんは
そんなん勿論、即答するわな。
『 こんにちは!!』
地蔵茶屋跡についたら
先客がいてはる。
ここは、屋根のある休憩所と
トイレがあって
ご丁寧に自販機が置かれとった。
「なんやねん!
売り切ればっかやんか!!」
小銭入れを持って近づいた
チョウコさんが 土を蹴りはる。
イヤイヤ、輩やから!それ!
「仕方ないですよ。週に一回の
入れ替えに、この場所は、古道
客も多いですから。
そのかわり、ほら、どうぞ。」
リンネさんから渡されたんは
温州みかんやね。
「いやぁ、やっぱしリンネさん
有田剥きしはるんやねぇ。」
うちと、チョウコさんが
みかんの皮を剥いて開くのに、
リンネさんは 皮ごし
みかんを3つに割いて
食べてはる。
「そーいや、リュウちゃんとこの
おっちゃんも 有田剥きや。」
イヤイヤ、チョウコさん
リュウちゃんて。
「キコさん。ハジメさんは同期
だったんですよね。ご主人は、
ハジメさんの先輩?でしたっけ
もしかして、、病気されてた
友人て、キコさんのご主人かな
って。あ、前に何かで、聞いた
気がしてて。あー、すいません」
リンネさんが、
それとなーく聞いてきはったんは
きっとその通りやわ。
「そやと思う。うちの旦那、
病気で亡くなったから。ほんま
ハジメくんの、ええ女房やって
んよ。ああ、仕事でのやよ、」
ホンマに、
ええ人で、突拍子のない人やった
「ほんで?ご主人のユーレーに
会うたん?さっきの山ん中で」
チョウコさんは
残りのみかん、口に入れて
モグモグさせとるのよ。
「ユーレーちゃいます。えろー
似たお人が 走って行きはった
だけですやん。チョウコさんは」
せっかちやわあ。
「なんやー!しょーもな。」
え、なんやのん。
うちはカチンときた。
「しょーもなって、何?!
チョウコさんかて、初恋の人
おーてんへんでしょ。いやぁや
チョウコさん勝手やわ。」
ほんま、言い方!!
「あの!キコさんも、チョウコ
さんも止めて下さい。ケンカ祭
じゃあるまいし。はい、
皮もらいます。さ、行きましょ」
リンネさんが気をきかせて
くれはった。
また、山の古道に入る。
ここからは、
ほんまに石倉峠ってとこから
次の越前峠ってとこまで
今までで一1番キツイ
一気登り道やて。
その途中で、
突然チョウコさんが
「さっきは、ゴメン。」
て、振り返って言うて、
また前を向いて行きはった。
なんやのん。
それ、なんやのん。
うちの心ん中を
また、
凄い勢いで通り過ぎて
走ってく 旦那の背中が
見えてしまう。
『さっきは、ゴメン。でも、
これで、俺はキコにとって
忘れられへん男になるやろ?』
あの時、
まだ旦那にも、付きおうてもない
あの人は、
そう言って凄い勢いで走ると、
3階にあるうちの部屋の窓から
飛び降りたんや。
ホンマ、それ、急にやった。
「!!!」
「こんにちはー。」
こっからは
見るからに
急な石段の下りなんを、
その先
藪から棒に
モンの凄い勢いで駆け登って
きた人!!
東屋で一服するうちらに
軽快なあいさつしはって、
リンネさんと、チョウコさんは
打てば響くように
あいさつを返しはった
けど、
「えろー似てはったわ。」
うちは、そないなこと
口にしてた。
ここまでようよう、
登ってきたのんを
今度は一旦下ると
リンネさんが
何もなかった様に
教えてくれるんやけども
うちは、さっき
勢いよく
走り抜けた人の後ろ姿を
ついつい
ながいこと見ててしもた。
「うあー。下りって、
あんまし、腰によおないやん。
ちょお、サラシ巻かせ
て。あたし、腰痛持ちやねん 」
チョウコさんが隣で、
装束のお腹をめくっりはって
そないなモン、よう持ってはる
なあとかリンネさんに
言われながら
慣れた所作で
サラシを巻いてはる。
なんとなしに、
チョウコさん祭りやってはるん
やなあって感じた。
お茶飲んで一服したら、
ぐんぐん坂道を下って行く。
そしたら
だんだんなんや
暗くなって霧が
懸かりはじめたから、
山の天気はよう変わる。
「この辺りは、上皇の御幸に
しぶしぶ連れられた歌人が、
どしゃぶりの雨の中で
無理から歌を詠まされたのが
有名なんですよ。霊山の雰囲気
がまた戻ってくる趣ですかね」
リンネさんが、そない言いはる
けど確かに
山道はどんどん下るほど、
小さいお社さんがでてきて
燈明がオレンジに
薄暗い霧を照らし
はじめんのやわ。
石の仏さん、あ、
『サトリ』さんやね
がえらい多くなってきたわ。
なんやろかちゃう雰囲気に
感じるんよ。
「昔はよくヒルがこの木から
ぼたぼた落ちてきたそうです。
ここらへんは湿っぽいから。
これでも、戦後に木が切られて
山自体が乾いたからヒルの数も
マシみたいなんですけどね。」
お陰で、昔より霊気が薄れたって
これでですのん?
「今でも、ダルでそうやわ。」
うちが言うたら
リンネさんが、
「ここは出ますよ。」
いうはるから、
うちは残してた『ハララ』を
ぱっと食べとくと、
チョウコさんは、
「それって何のオマジナイなん」
て、目ぇ、まん丸にしてはった。
そやから
「チョウコさんの、サラシと
おんなし、転ばぬ杖やよ。」
って、答えとく。
そこから
ちっさいけど
ええ感じの小川に沿って、
その岸を左右いったりきたり
して進む。
「このサラシな、
リュウちゃんのモンやねん。
祭でよう、巻とったヤツなん」
チョウコさんが
道に出てきた
お石お不動明さんに
3人で 真言を唱えたら
いきなり言いはった。
出てきたお不動さんは、
野趣あってちっさいけど
妙に存在感を漂わせてはる。
「リュウちゃんて、旦那さん?」
コーヒー号泣ん時に
聞いた名前やけど、チョウコさん
は何もいいはれへん。
「お祭かぁ。ハジメくんに、
旦那を紹介されたんも、お祭
やったさかい、お祭りいうんは
なんなと思い出あるもんよね 」
そう、
チョウコさんに相づちうつ
ように答えて、
察して頷くリンネさんを前に
半分壊れかけの橋を渡ると、
久しぶりに
アスファルトの林道に
ようやく出たー。
ここが
色川辻らしい。
やっぱり
林道に出ると、人の気配が
急にしてくるもんやね。
ホッとするわ。
そやけどまた、
小川の横を
歩いて林道をもう一度横切ると
再び登りの古道やわ。
又登って、登ってして行くと
もう一度
林道に出て、こっからしばらく
アスファルト林道を
迂回ルートに歩んやて。
『こんにちは!!』
すると
後ろからまた、凄い勢いで
挨拶する
若い青年に追い越されたん。
「あ、、」
つい、
さっき峠ですれちごうた
男の人を思い出してもうたわ。
「なあ、どないしたん?」
チョウコさんが振り返って
うちを見ながら
歩いてはるから。
「いやなあ。別に、亡者
ゆーても幽霊に会うわけや
ないんや、思ってただけやわ。」
川の横っちょ
アスファルトの道路に、
気が緩んで歩く。
「うえ!キコさん、それって、
旦那さんのユーレーみれたん?」
いつの間にー!!
水臭いやん、言うてよ!って
チョウコさんが喚くから
「もー!チョウコさん、体力
余ってるんですね!なら!
休憩はいりませんか?!」
ってリンネさんが
キレた。
どうも
ここの緩やかな道を行くと
地蔵茶屋跡らしい。
「「休む!休みます!!」」
うちと、チョウコさんは
そんなん勿論、即答するわな。
『 こんにちは!!』
地蔵茶屋跡についたら
先客がいてはる。
ここは、屋根のある休憩所と
トイレがあって
ご丁寧に自販機が置かれとった。
「なんやねん!
売り切ればっかやんか!!」
小銭入れを持って近づいた
チョウコさんが 土を蹴りはる。
イヤイヤ、輩やから!それ!
「仕方ないですよ。週に一回の
入れ替えに、この場所は、古道
客も多いですから。
そのかわり、ほら、どうぞ。」
リンネさんから渡されたんは
温州みかんやね。
「いやぁ、やっぱしリンネさん
有田剥きしはるんやねぇ。」
うちと、チョウコさんが
みかんの皮を剥いて開くのに、
リンネさんは 皮ごし
みかんを3つに割いて
食べてはる。
「そーいや、リュウちゃんとこの
おっちゃんも 有田剥きや。」
イヤイヤ、チョウコさん
リュウちゃんて。
「キコさん。ハジメさんは同期
だったんですよね。ご主人は、
ハジメさんの先輩?でしたっけ
もしかして、、病気されてた
友人て、キコさんのご主人かな
って。あ、前に何かで、聞いた
気がしてて。あー、すいません」
リンネさんが、
それとなーく聞いてきはったんは
きっとその通りやわ。
「そやと思う。うちの旦那、
病気で亡くなったから。ほんま
ハジメくんの、ええ女房やって
んよ。ああ、仕事でのやよ、」
ホンマに、
ええ人で、突拍子のない人やった
「ほんで?ご主人のユーレーに
会うたん?さっきの山ん中で」
チョウコさんは
残りのみかん、口に入れて
モグモグさせとるのよ。
「ユーレーちゃいます。えろー
似たお人が 走って行きはった
だけですやん。チョウコさんは」
せっかちやわあ。
「なんやー!しょーもな。」
え、なんやのん。
うちはカチンときた。
「しょーもなって、何?!
チョウコさんかて、初恋の人
おーてんへんでしょ。いやぁや
チョウコさん勝手やわ。」
ほんま、言い方!!
「あの!キコさんも、チョウコ
さんも止めて下さい。ケンカ祭
じゃあるまいし。はい、
皮もらいます。さ、行きましょ」
リンネさんが気をきかせて
くれはった。
また、山の古道に入る。
ここからは、
ほんまに石倉峠ってとこから
次の越前峠ってとこまで
今までで一1番キツイ
一気登り道やて。
その途中で、
突然チョウコさんが
「さっきは、ゴメン。」
て、振り返って言うて、
また前を向いて行きはった。
なんやのん。
それ、なんやのん。
うちの心ん中を
また、
凄い勢いで通り過ぎて
走ってく 旦那の背中が
見えてしまう。
『さっきは、ゴメン。でも、
これで、俺はキコにとって
忘れられへん男になるやろ?』
あの時、
まだ旦那にも、付きおうてもない
あの人は、
そう言って凄い勢いで走ると、
3階にあるうちの部屋の窓から
飛び降りたんや。