白い巨大 『卍』マークの横で、
中指を立てて、ガンを飛ばす
ポニーテールの清楚な美人が
『真面、卍。』と
画面の向こうにいる
誰かに向けて 吼えているのを、
アップされたSNSの画面から
汲み取って、
わたし、キコは
隣でハンドルを
握るポニーテール清楚美人に
思い切って聞いたわけで。
「えーとですね。さっきの写真、
誰に向けて アップしたとか、
あったりしますのん?なーんて」
すいません、初対面で、しかも
ヒッチハイク同然で車乗せて
もろてるのに、アハハ汗。
って感じに。ね。
「旦那に。てか家に女連れ込んで
妻を締め出す、やり◯ん不貞
亭主 に向けて。
ですわ。って感じで
答えになってますー?エヘヘ」
見たら、ペコちゃん舌出しで、
可愛く笑いながら、
首を親指で真横に切る
DEATH ポーズをされた。
スゴいな。
ポニーテール清楚美人なのに。
笑えた。
「やー!ネタですかぁ?もしか
して。ならスゴいウケますぅ」
そして、何故か自己紹介をお互い
交わしてしまった。
波長があってしまったらしい。
これじゃあ
まるで、ロードムービーだ。
「アハハ、でもねキコさん。
ネタでもなんでもなくって、
真面な話なんですよ。だって、
今のわたし、逃走中なんで。」
そう大笑いする
ポニーテール美人チョウコさんは
愛人を連れ込んで情事に及ぶ
亭主の部屋に
車で突っ込んで、逃げたて
ホヤホヤの今なのだと、
告白してきた。
ガッデーム!!やっぱり姉御?!
そっちの人?!
えらい車をヒッチハイク
したかも、わたし。
「いやぁ、えらい思い切りはり
ましたなぁ。そんな派手な事、
チョウコさんとこでは、普通
ですのん?えらい威勢ええわ。」
ここは、ちこっと探りいれとく。
輩の筋なら、すぐに
お暇させてもらおう。うん。
そんな事を考えてるの
バレバレやったか、
チョウコさんが ミラー越しに
わたしを見てニンマリした。
「うち、よう間違われるんやけど
ちゃんとカタギですよ。フフ」
あ、居心地悪くて、
何か恥ずかしい。図星ってね。
「どうしはるんですか。まあ、
赤の他人ですけど。気になり
ますし。好いたご主人とはいえ、
別れはるんでしょうね。普通」
フロントガラスを見たまま、
カーラジオの演歌?をBGMに
空気を繋げる。
なのに、
「どうやろ、初めから、好いた
相手じゃなかったってのが、
ホンマのとこですねん。あかん
ね、上手くいくはずないわ。」
そりゃねー、て言うチョウコさん
のガラスに映る顔は
言葉と裏腹に寂しげで、
「好きやないって、ご主人とは
そーゆー結婚しはる家とか?」
ほら、家同士のーとか、
義理の見合いーとか、ですのん?
ってフォローっぽく聞くしか
ないでしょ!!
チョウコさんは、
やっぱりハンドル握って
前を見ている。
「あ、ええです。聞き過ぎ
ましたわぁ。今のんは無しで。」
わたしは、
話を変える為に 鞄の中をごそごそ
して、缶コーヒーを出した。
「良かったら?コーヒーどうぞ」
ちょっと懐かしいメーカーの
缶コーヒー。今は 珍しくなった
このコーヒーを
途中で見つけた自販機で、つい
買ってしまったのだ。
それがまた地雷とは。
「この缶コーヒー、、あの人、
リュウちゃんが好きやったやつ」
あ、不貞亭主?
「わ、ごめんなさい。へんなこと
思い出させてしもたわ。なら、
コーヒーはいらん?いらんね?」
はい、失礼しました。
直させてもらいますぅ。
てか!!
「わあーー!どないしはったん?
チョウコさん、ダダ泣きやん!
うわ、運転、運転ちゃんとして」
チョウコさんが 子供みたいに
えぐえぐ言うて泣いてますけど!
「止めましょ!車!一旦止めて」
凄い演歌がシンクロしてもう、
何がなんだかの状況!!
まあ、慣れてもいるけど
前職的に。
「チョウコさん、えーっと、
コーヒーは無しやろうし、他、
あ、コンビニおにぎり。
いります?ほら、食べません。」
わたしは、鞄に残ってた
最後のおにぎりを 剥いて
半分を無理から
チョウコさんに渡した。
「うー、うー、うー!、そこ、」
泣くのを堪えて、チョウコさんが
後ろの席のビニールを指さす。
お茶のペットボトルがあった。
1本のペットボトルを開けて、
もう空になってる水筒に
自分の飲む分を分けて、
残りは
チョウコさんに渡す。
1つのおにぎりと、
1本のペットボトルを分ける。
それが、なんだか
久しぶりで ニンマリしてしまう。
「う、う、ど、どうし、た、の」
泣きエズきながらチョウコさんが
聞いてきたから、
それも笑える。
「あは、いや、そーいえば
亡くなった夫とも、よくこー
して分け分けしたなあって、」
ほら、食べる物を分けるって
いろいろ距離感の思い出があって
微笑ましくなって
しまいました。
って、チョウコさんに
何気なくしゃべってしまった。
「キコさん、既婚者?って、
ダジャレか?やけど、ちがうで。
キコさん、旦那さん亡くしてる
のん?え、そうなん?なら、」
チョウコさんが、
さっきまで えぐえぐ泣いてたのに
急にわたしの肩を掴んでくる。
どうした?!
「え、はい。まあ。その。」
アホな返しやわぁって反省して
たら、チョウコさんが、
おにぎりを片手に、
「うちもな、初恋の恋人を
亡くしてん。それで、あんなのと
半分自棄で結婚したようなもん」
やから、
やから?
今から 亡くなった彼に会いに
いくねん。
キコさんも行かへん?
へっ?!
へやない。
フロントガラス越しじゃない、
チョウコさんは、
真っ直ぐわたしの方を見て
そんな馬鹿げた話をしてきた。
それが、
2人でそのまま、件のお寺さんに
行くことになるとは、
世の中はミラクルに
溢れている。
これが
巨大卍マークの後で、
チョウコさん缶コーヒーで泣く
事件と 語り継がれる。
わけあらへんわ。
中指を立てて、ガンを飛ばす
ポニーテールの清楚な美人が
『真面、卍。』と
画面の向こうにいる
誰かに向けて 吼えているのを、
アップされたSNSの画面から
汲み取って、
わたし、キコは
隣でハンドルを
握るポニーテール清楚美人に
思い切って聞いたわけで。
「えーとですね。さっきの写真、
誰に向けて アップしたとか、
あったりしますのん?なーんて」
すいません、初対面で、しかも
ヒッチハイク同然で車乗せて
もろてるのに、アハハ汗。
って感じに。ね。
「旦那に。てか家に女連れ込んで
妻を締め出す、やり◯ん不貞
亭主 に向けて。
ですわ。って感じで
答えになってますー?エヘヘ」
見たら、ペコちゃん舌出しで、
可愛く笑いながら、
首を親指で真横に切る
DEATH ポーズをされた。
スゴいな。
ポニーテール清楚美人なのに。
笑えた。
「やー!ネタですかぁ?もしか
して。ならスゴいウケますぅ」
そして、何故か自己紹介をお互い
交わしてしまった。
波長があってしまったらしい。
これじゃあ
まるで、ロードムービーだ。
「アハハ、でもねキコさん。
ネタでもなんでもなくって、
真面な話なんですよ。だって、
今のわたし、逃走中なんで。」
そう大笑いする
ポニーテール美人チョウコさんは
愛人を連れ込んで情事に及ぶ
亭主の部屋に
車で突っ込んで、逃げたて
ホヤホヤの今なのだと、
告白してきた。
ガッデーム!!やっぱり姉御?!
そっちの人?!
えらい車をヒッチハイク
したかも、わたし。
「いやぁ、えらい思い切りはり
ましたなぁ。そんな派手な事、
チョウコさんとこでは、普通
ですのん?えらい威勢ええわ。」
ここは、ちこっと探りいれとく。
輩の筋なら、すぐに
お暇させてもらおう。うん。
そんな事を考えてるの
バレバレやったか、
チョウコさんが ミラー越しに
わたしを見てニンマリした。
「うち、よう間違われるんやけど
ちゃんとカタギですよ。フフ」
あ、居心地悪くて、
何か恥ずかしい。図星ってね。
「どうしはるんですか。まあ、
赤の他人ですけど。気になり
ますし。好いたご主人とはいえ、
別れはるんでしょうね。普通」
フロントガラスを見たまま、
カーラジオの演歌?をBGMに
空気を繋げる。
なのに、
「どうやろ、初めから、好いた
相手じゃなかったってのが、
ホンマのとこですねん。あかん
ね、上手くいくはずないわ。」
そりゃねー、て言うチョウコさん
のガラスに映る顔は
言葉と裏腹に寂しげで、
「好きやないって、ご主人とは
そーゆー結婚しはる家とか?」
ほら、家同士のーとか、
義理の見合いーとか、ですのん?
ってフォローっぽく聞くしか
ないでしょ!!
チョウコさんは、
やっぱりハンドル握って
前を見ている。
「あ、ええです。聞き過ぎ
ましたわぁ。今のんは無しで。」
わたしは、
話を変える為に 鞄の中をごそごそ
して、缶コーヒーを出した。
「良かったら?コーヒーどうぞ」
ちょっと懐かしいメーカーの
缶コーヒー。今は 珍しくなった
このコーヒーを
途中で見つけた自販機で、つい
買ってしまったのだ。
それがまた地雷とは。
「この缶コーヒー、、あの人、
リュウちゃんが好きやったやつ」
あ、不貞亭主?
「わ、ごめんなさい。へんなこと
思い出させてしもたわ。なら、
コーヒーはいらん?いらんね?」
はい、失礼しました。
直させてもらいますぅ。
てか!!
「わあーー!どないしはったん?
チョウコさん、ダダ泣きやん!
うわ、運転、運転ちゃんとして」
チョウコさんが 子供みたいに
えぐえぐ言うて泣いてますけど!
「止めましょ!車!一旦止めて」
凄い演歌がシンクロしてもう、
何がなんだかの状況!!
まあ、慣れてもいるけど
前職的に。
「チョウコさん、えーっと、
コーヒーは無しやろうし、他、
あ、コンビニおにぎり。
いります?ほら、食べません。」
わたしは、鞄に残ってた
最後のおにぎりを 剥いて
半分を無理から
チョウコさんに渡した。
「うー、うー、うー!、そこ、」
泣くのを堪えて、チョウコさんが
後ろの席のビニールを指さす。
お茶のペットボトルがあった。
1本のペットボトルを開けて、
もう空になってる水筒に
自分の飲む分を分けて、
残りは
チョウコさんに渡す。
1つのおにぎりと、
1本のペットボトルを分ける。
それが、なんだか
久しぶりで ニンマリしてしまう。
「う、う、ど、どうし、た、の」
泣きエズきながらチョウコさんが
聞いてきたから、
それも笑える。
「あは、いや、そーいえば
亡くなった夫とも、よくこー
して分け分けしたなあって、」
ほら、食べる物を分けるって
いろいろ距離感の思い出があって
微笑ましくなって
しまいました。
って、チョウコさんに
何気なくしゃべってしまった。
「キコさん、既婚者?って、
ダジャレか?やけど、ちがうで。
キコさん、旦那さん亡くしてる
のん?え、そうなん?なら、」
チョウコさんが、
さっきまで えぐえぐ泣いてたのに
急にわたしの肩を掴んでくる。
どうした?!
「え、はい。まあ。その。」
アホな返しやわぁって反省して
たら、チョウコさんが、
おにぎりを片手に、
「うちもな、初恋の恋人を
亡くしてん。それで、あんなのと
半分自棄で結婚したようなもん」
やから、
やから?
今から 亡くなった彼に会いに
いくねん。
キコさんも行かへん?
へっ?!
へやない。
フロントガラス越しじゃない、
チョウコさんは、
真っ直ぐわたしの方を見て
そんな馬鹿げた話をしてきた。
それが、
2人でそのまま、件のお寺さんに
行くことになるとは、
世の中はミラクルに
溢れている。
これが
巨大卍マークの後で、
チョウコさん缶コーヒーで泣く
事件と 語り継がれる。
わけあらへんわ。