それから、また一から全てをやり直した。
自分の事だけでなく、人との繋がりも。

変わっていく俺に、父は笑っていた。空はカッコいいと言ってくれた。

母さんも、笑ってくれているだろうかとぼんやりと空を見上げて思う。


そして、俺は父にあるお願いをした。

「え?!ここの高校行くのか?!」

見せたパンフレットに、父は目を見開いてそのパンフレットと俺を交互に見る。

「…母さんの実家に…住まわせて貰えないかなって…。そこからバスでそんなに掛かんないし…。」

「うーん、まぁそれは大丈夫だろうけど…。なんでまたここの高校に…。」

眉を寄せて難しい顔をする父に、俺は1つ深呼吸をして口を開く。

「会いたい人がいるんだ。」

「会いたい…人…?」

何度も救ってくれた。
戻る前の過去でも。
俺が戻った過去でも。

「父さん…言ったよな…?俺にもきっと、自分を理解してくれる人と出会えるって…。俺はもうその人に出会ってる。俺を救ってくれた人。この高校に彼女が来るかは正直分からない。でも、それでも…。」

可能性があるのなら。

「行ってこいよ。」

「え…。」

顔を上げれば、父は嬉しそうに笑っていた。

「そんな人、もう出会えるかも分からないんだ。見つけたなら追いかけろ。可能性が少しでもあるのなら、行ってこい。」

力強いその言葉に、俺は深く頷いた。

彼女との思い出はなくなってしまった。
それでも俺の記憶の中にはある。
優しく笑う彼女が、今も脳裏に浮かぶ。

縁を結んでくれる風鈴はもうないけれど。
それでも、コウの言っていた俺がつくった縁を辿って、俺は彼女の元へ行く。