放課後。
来週から景品作りを放課後もやろうと言った河村くんは、バイトがあるからと言って帰ってしまった。

1人ではやるなと釘を刺された私は、もう帰ろうと身支度を始めた。

周りの生徒は皆文化祭準備に取り掛かっていて、少しだけ居心地の悪さを感じてしまう。

身支度を終えて、帰ろうと立ち上がって密かに辺りを見渡す。

壁際の一番後ろ。
同じ班のメンバーと話す西川くんが目に入って、すぐに視線を反らす。

笑顔を見せていた彼の隣には、やっぱり黒崎さんがいた。

文化祭で同じ班になった2人がよく話しているのを目にしてから、私は彼とうまく話せなくなった。

彼女だけではない。

明らかに彼に好意を寄せている女の子は何人かいて、その中でも黒崎さんと西川くんは特に仲が良いように思う。

嫉妬。

自分の中に生まれたその感情が嫌で、気持ち悪くて、私は彼を見ないようにと避け始めた。

自分勝手なのは分かっていた。
明らかな私の態度に、彼はもう話掛けてはくれなくなって、半ば自棄になりながらも私は避け続けている。

視界にいれないよう。
彼の声が耳に入らないよう。

帰りはこうして彼がいるところを確認して、それを避けるように彼がいない扉から出ている。

壁際の一番後ろの席の彼がいるのは大体そこで、だから私の出入口は前の扉と決めている。

一つ深呼吸をして、私はそそくさと教室を後にした。

無意識に視線を追ってしまった西川くんはやっぱり笑っていて。
胸が張り裂けそうな位苦しくなっていることに気が付いて拳を握る。

見たくない。聞きたくない。
見たくない。聞きたくない。
見たくない。聞きたくない。

昇降口について、ふと窓ガラスに写った自分の姿に絶句した。

「…っ…」

気持ちが悪い。

今にも泣きそうに歪んだその顔が、気持ち悪くてしょうがなかった。

見たくない。
聞きたくない。

こんな自分を。
本当の想いを呟く自分を。

ぱっと視線を外して、私は歩き始める。

何も考えない。
何も考えない。

そう自分に言い聞かせて、私は学校を後にした。