5時間目が始まって、私は伏せていた顔を上げた。

あの後、昼休みが終わるまで泣き続けた私の目は赤くなっていて、聡美に大笑いされた。
そんな聡美の姿が嬉しくて。最後には私も笑みをこぼしていた。

「よーし!じゃあ今日は2時間使って文化祭の出し物決めてくからな。じゃ、委員長よろしく。」

担任の山本先生の声に我に返って、意識をそちらに集中させる。

目の前で立ち上がった委員長の河村くんをぼんやりと見つめていれば、彼は教卓へ上がって笑った。

「はい!じゃあ今から出し物決めていきまーす。何か案がある人ー。」

その声で教室内はざわざわと騒がしくなって、私は窓の外を見つめた。

ただぼんやりと空を見つめながら、特にやることもなくぼーっとしていた。


眠気と戦って数十分。
不意に黒板を見つめればいくつか案が出ているようで、その中にはやっぱり縁日の文字もあった。

「はーい!じゃあこの中からどれがいいか決めるから、1人1つ手挙げてくれ。」

河村くんの言葉に黒板を見直せば、副委員長の清水さんの綺麗な字が目にはいる。

いくつも書かれた出し物の中で、私は縁日へと決めて手をあげた。

案の定出し物は縁日に決まり、6時間目は具体的に何をやるかも決め、班決めが始まった。

内容はもぐらたたき、射的、釣りゲーム、わたあめの4つの出し物だった。

記憶を巡らせても、やっぱり自分が何の担当だったかも思い出せなければ一緒になったメンバーの顔も思い出せなかった。

優奈と同じ班が良いなと思いながらも、結局同じになることはなく。

私は委員長の河村くん率いる釣りゲーム班に決まった。
メンバーの書かれた黒板を確認すればあまり話したことのないメンバーだったが、その中に田中くんの名前があって安堵する。

優奈はわたあめで、西川くんは射的というのを確認して、密かに私は肩を落としていた。


「離れちゃったねー…。」

掃除の時間、優奈はあからさまに悲しそうな顔をしてそう言った。

「だね…。でも私…わたあめじゃなくて良かったな…。」

「だよね。わたあめとか難しそう…。せめて幸乃がいたら良かったのにー…。」

はぁと深いため息をつく優奈の言葉に、正直嬉しく思っていた。

優奈も同じことを思っていてくれた。

笑みが溢れる顔を不自然にならないように隠しながら、楽しもうねと口にした。

「そだね!楽しもうね!」

笑顔を見せる優奈に、私は頷きながら今度は笑みを見せた。