4時間の授業を受けた私は、購買へ行こうと立ち上がった。
お財布を取ろうと鞄を漁っていると、目の前に人が立ったのが分かった。
「沢村さん。」
私が顔を上げるよりも先に、もう聞き慣れた長月さんの優しい声が耳に入ってきた。
「さっきは、ありがとう…。よく眠れた。」
眉を寄せて笑う彼女の顔色は朝よりも良くなったように見えて、密かに良かったと胸を撫で下ろした。
「あ…もう、大丈夫…?」
何とか視線を反らさぬようにしてそう言えば、彼女は深く頷いた。
すると、長月さんはすぐに申し訳なさそうに眉を寄せたかと思えば、急に頭を下げてきた。
そんな彼女の行動にビックリして、思わずえ?!と声を上げた。
「沢村さんの言う通り…。体調崩してたら、絵描けない…。正直、体調悪いって自分で気付かなかった。沢村さんが気付いてくれたから、倒れずに済んだ。ありがとう。」
いつもの優しい笑みを取り戻した彼女に、胸があたたかくなって私も自然と笑みをこぼした。
「…素敵な絵、見たいから…。体調は万全にね。」
「…うん!ありがとう!」
長月さんと別れ、購買で自分のお昼と、聡美に頼まれたものを買って屋上へ向かった。
先にお弁当を広げていた聡美に、買ったミルクチョコレートとショコラオレを渡せば、彼女は声を上げて喜んでいた。
「ありがとう!いやー疲れてるときはやっぱり甘いものだよね。」
聡美はそう言ってお弁当を食べる手を止めて、私が渡したチョコレートを1つ口に入れた。
その姿をぼんやりと見つめていれば、そんな彼女と視線が交わる。不思議そうにこちらを見たかと思えば、彼女は何かに気付いたかのようにはっとなってポケットに手を入れた。
「ごめん、ごめん。はい、お金。」
「え?……あ、うん…。」
お金が欲しくて見ていた訳では無いが、取り敢えずそれを受け取ってポケットにしまう。買ってきたメンチカツパンの封を開けてそれを頬張っていれば、隣からどうかしたの?と言う声が聞こえて顔を上げる。
「…何か…悩んでる?」
「え?」
眉間にシワを寄せながら、心配そうにこちらを見つめる彼女に、違うと声を上げる。
「…あ…いや…。…あのさ…」
「ん?」
「…ね、寝不足の人にもチョコレートは良いのかな…?って思って…。」
「寝不足の人?」
その問いかけに頷いて、手元のメンチカツパンをじっと見つめた。
うーんと唸る聡美の返事を待っていれば、目の前に私が買ったチョコレートが差し出されていた。
顔を上げて聡美を見れば、彼女はどこか嬉しそうに笑っていて、そんな彼女に小首を傾げる。
「友達?」
「っ」
聡美の口からこぼれたその言葉に、胸が締め付けられる感覚に襲われた。
「さっき、ここ来るとき4組の教室覗いたら、幸乃が顔色悪い女の子と話してるの見えて。」
「え…。」
「何か、してあげたいんでしょ?まぁ、寝不足にチョコレートが良いのかは分からないけど。でも、疲れてるなら甘いもの良いと思うよ。」
そう言って彼女は私の手にチョコレートを乗せた。
「ま、例え効果がなくても心配してくれるだけで、何かをしてくれるだけで人って嬉しくなるもんじゃない?」
優しく笑って、聡美はまたお弁当を食べ始めた。
私もパンを食べるのを再開させて、ただぼんやりと空を見つめる。
暫くして食べ終わった私は立ち上がった。
「…購買…行ってくる…。」
そうぽつりと言えば、聡美のどこか弾んだ声が返ってきて、私はそそくさと屋上を後にした。
お財布を取ろうと鞄を漁っていると、目の前に人が立ったのが分かった。
「沢村さん。」
私が顔を上げるよりも先に、もう聞き慣れた長月さんの優しい声が耳に入ってきた。
「さっきは、ありがとう…。よく眠れた。」
眉を寄せて笑う彼女の顔色は朝よりも良くなったように見えて、密かに良かったと胸を撫で下ろした。
「あ…もう、大丈夫…?」
何とか視線を反らさぬようにしてそう言えば、彼女は深く頷いた。
すると、長月さんはすぐに申し訳なさそうに眉を寄せたかと思えば、急に頭を下げてきた。
そんな彼女の行動にビックリして、思わずえ?!と声を上げた。
「沢村さんの言う通り…。体調崩してたら、絵描けない…。正直、体調悪いって自分で気付かなかった。沢村さんが気付いてくれたから、倒れずに済んだ。ありがとう。」
いつもの優しい笑みを取り戻した彼女に、胸があたたかくなって私も自然と笑みをこぼした。
「…素敵な絵、見たいから…。体調は万全にね。」
「…うん!ありがとう!」
長月さんと別れ、購買で自分のお昼と、聡美に頼まれたものを買って屋上へ向かった。
先にお弁当を広げていた聡美に、買ったミルクチョコレートとショコラオレを渡せば、彼女は声を上げて喜んでいた。
「ありがとう!いやー疲れてるときはやっぱり甘いものだよね。」
聡美はそう言ってお弁当を食べる手を止めて、私が渡したチョコレートを1つ口に入れた。
その姿をぼんやりと見つめていれば、そんな彼女と視線が交わる。不思議そうにこちらを見たかと思えば、彼女は何かに気付いたかのようにはっとなってポケットに手を入れた。
「ごめん、ごめん。はい、お金。」
「え?……あ、うん…。」
お金が欲しくて見ていた訳では無いが、取り敢えずそれを受け取ってポケットにしまう。買ってきたメンチカツパンの封を開けてそれを頬張っていれば、隣からどうかしたの?と言う声が聞こえて顔を上げる。
「…何か…悩んでる?」
「え?」
眉間にシワを寄せながら、心配そうにこちらを見つめる彼女に、違うと声を上げる。
「…あ…いや…。…あのさ…」
「ん?」
「…ね、寝不足の人にもチョコレートは良いのかな…?って思って…。」
「寝不足の人?」
その問いかけに頷いて、手元のメンチカツパンをじっと見つめた。
うーんと唸る聡美の返事を待っていれば、目の前に私が買ったチョコレートが差し出されていた。
顔を上げて聡美を見れば、彼女はどこか嬉しそうに笑っていて、そんな彼女に小首を傾げる。
「友達?」
「っ」
聡美の口からこぼれたその言葉に、胸が締め付けられる感覚に襲われた。
「さっき、ここ来るとき4組の教室覗いたら、幸乃が顔色悪い女の子と話してるの見えて。」
「え…。」
「何か、してあげたいんでしょ?まぁ、寝不足にチョコレートが良いのかは分からないけど。でも、疲れてるなら甘いもの良いと思うよ。」
そう言って彼女は私の手にチョコレートを乗せた。
「ま、例え効果がなくても心配してくれるだけで、何かをしてくれるだけで人って嬉しくなるもんじゃない?」
優しく笑って、聡美はまたお弁当を食べ始めた。
私もパンを食べるのを再開させて、ただぼんやりと空を見つめる。
暫くして食べ終わった私は立ち上がった。
「…購買…行ってくる…。」
そうぽつりと言えば、聡美のどこか弾んだ声が返ってきて、私はそそくさと屋上を後にした。