「漢字が…」
休み時間。困ったような顔で笑う長月さんは、私が貸した本を片手にそう言った。
「どこ?」
このやり取りはもう何回もあって、その度に彼女は申し訳なさそうに眉を寄せながらごめんねと言う。
「この本って、難しい漢字が多いね。」
「うん…。本読まない人からしたらちょっと大変かもね…。」
「ごめんね…。休み時間の度に聞いちゃって。今も何かやってたよね、ほんとにごめん。」
私の手元のスマホを見つめながら、長月さんは申し訳なさそうにそう言った。
「あ、大丈夫だよ。…こ、これも…何か参考になるかなって思って、舞のこと調べてたの…。」
そう言ってスマホの画面を見せれば、彼女は目を見開いてスマホの画面と私の顔を見つめた。
「あの…何か役に立てないかなって思って…。」
難しい顔で本とにらめっこをしていた彼女が頭にちらついて、田中くんから借りた本が頭に入っていなかった。
少しでも彼女の役に立てないかと考えた末、私は舞のことについて調べ始めた。
けれど勝手にこんなことをやっている自分が恥ずかしくなって、彼女の顔を見ることが出来ずに手元の舞の動画をぼんやりと眺めていた。
「…その動画、送って貰っても良い?」
「え…」
そっと顔を上げれば、長月さんは優しい笑みを浮かべていた。
「ありがとう。私のために。すっごく嬉しい!あ!そういえば連絡先交換してないよね!交換しよ!」
ポケットからスマホを取り出した長月さんは、素早くアプリを開いて私の方へ差し出してきた。
そんな彼女にはっとなって私も急いでアプリを開く。
「高校に入って初めて連絡先交換した…。ありがとう…。」
少し照れくさそうに言う長月さんに、自分の心が密かに熱くなるのを感じた。
「こちらこそ…。色々送っておくね…。」
「うん!よろしく!」
そう言うと、長月さんは前を向いてまた本へと向き直った。
初めてだった。こうして高校に入って連絡先を交換したのは。
あの頃、塞ぎ込んでいた私に積極的に話し掛けてくれた人はいなくて、自分もまた誰かに話し掛けることはなかった。
広く浅く。深くは関わろうとしないで、必要最低限のことしか話をしなかった。
何であの時塞ぎ込んでいたいたのだろうか。
理由なんて分かりきっているのだけれど、こんなにも後悔するのならもっと出来ることがあっただろう。
そう思うけど、その時の私が出来るのかと問われれば答えは出来ないだ。
後悔したから今そう思うことが出来るわけで。その時の私は私で違う後悔をしていた。その後悔は今も変わらずしているのだけれど…。
チャイムの音で現実へと引き戻された私はスマホをポケットへしまった。
どうして人生とは後悔ばかりなのだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、どこまでも青い空を見つめていた。
休み時間。困ったような顔で笑う長月さんは、私が貸した本を片手にそう言った。
「どこ?」
このやり取りはもう何回もあって、その度に彼女は申し訳なさそうに眉を寄せながらごめんねと言う。
「この本って、難しい漢字が多いね。」
「うん…。本読まない人からしたらちょっと大変かもね…。」
「ごめんね…。休み時間の度に聞いちゃって。今も何かやってたよね、ほんとにごめん。」
私の手元のスマホを見つめながら、長月さんは申し訳なさそうにそう言った。
「あ、大丈夫だよ。…こ、これも…何か参考になるかなって思って、舞のこと調べてたの…。」
そう言ってスマホの画面を見せれば、彼女は目を見開いてスマホの画面と私の顔を見つめた。
「あの…何か役に立てないかなって思って…。」
難しい顔で本とにらめっこをしていた彼女が頭にちらついて、田中くんから借りた本が頭に入っていなかった。
少しでも彼女の役に立てないかと考えた末、私は舞のことについて調べ始めた。
けれど勝手にこんなことをやっている自分が恥ずかしくなって、彼女の顔を見ることが出来ずに手元の舞の動画をぼんやりと眺めていた。
「…その動画、送って貰っても良い?」
「え…」
そっと顔を上げれば、長月さんは優しい笑みを浮かべていた。
「ありがとう。私のために。すっごく嬉しい!あ!そういえば連絡先交換してないよね!交換しよ!」
ポケットからスマホを取り出した長月さんは、素早くアプリを開いて私の方へ差し出してきた。
そんな彼女にはっとなって私も急いでアプリを開く。
「高校に入って初めて連絡先交換した…。ありがとう…。」
少し照れくさそうに言う長月さんに、自分の心が密かに熱くなるのを感じた。
「こちらこそ…。色々送っておくね…。」
「うん!よろしく!」
そう言うと、長月さんは前を向いてまた本へと向き直った。
初めてだった。こうして高校に入って連絡先を交換したのは。
あの頃、塞ぎ込んでいた私に積極的に話し掛けてくれた人はいなくて、自分もまた誰かに話し掛けることはなかった。
広く浅く。深くは関わろうとしないで、必要最低限のことしか話をしなかった。
何であの時塞ぎ込んでいたいたのだろうか。
理由なんて分かりきっているのだけれど、こんなにも後悔するのならもっと出来ることがあっただろう。
そう思うけど、その時の私が出来るのかと問われれば答えは出来ないだ。
後悔したから今そう思うことが出来るわけで。その時の私は私で違う後悔をしていた。その後悔は今も変わらずしているのだけれど…。
チャイムの音で現実へと引き戻された私はスマホをポケットへしまった。
どうして人生とは後悔ばかりなのだろうか。
そんなことをぼんやりと考えながら、どこまでも青い空を見つめていた。