次の日にはいつもより起きるのが遅く、準備が終わるころに咲來が私の家を訪ねた。
「ごめん。お待たせ」
 慌てて出ていくと咲來に笑われた。
 何か変なところでもあるのかと思い鏡を見ようとしたがドアをしてた後だったので確認ができなかった。
 そのまま先の近くに行き咲來に聞くことにした。
「そんなに笑っているけど、どこか変なところでもあるの?」
 咲來に尋ねると笑うのをやめて寝癖がついていること言ってくれた。
 いつもは私が支度を終えて咲來の家に言っているので、寝癖をつけていることがおかしいと思ったらしい。
 それと、普段見れない私を見て可愛いと思ったらしい。
 いつもと違う私を見て咲來は昨日矢部と何かあったのかと聞いてきたが私はごまかした。
 実母のことを話したことも、自分の価値観の話をしたこともなぜか矢部君に話したことを咲來には言えなかった。
 実母のことは咲來自身も知っているが私が思っている自分の価値観に関しては咲來にも話したことがなかったので、心の準備ができていない私は咲來に話せなかった。
 咲來の部活の話を聞きながら登校しているが、樹と話したこと話すべきかまだ悩んでいた。
 教室の前に着くと咲來がいつもならそのまま自分の教室に行くのに、今日は止まった。
「昨日のことはそこまで詮索しないけど、話したくなったらいつでも聞くし、相談にも乗るから話せることだけでも歩楓の話聞きたい! 話せなかったらそう言ってくれていいからお昼屋上で待っているね」
 咲來は自分が言いたいこと言ったのか自分教室へと歩いて行った。

 私は咲來が言った言葉にうれしく思いお昼休みに何を話そうか考えることにした。
 席に座ると矢部君がいつものように挨拶をしてきたが私は話すことはできなかった会釈はできた。
 いつもは反応がないでの矢部君のほうを受けなかったが、会釈をしたので矢部君のほうを向くと笑顔で手を振ってくれた。
(今日はいいことがいっぱいありそうだけど、朝に集中して放課後までこの良いことが持つかな?)
 そんなことを心配しながら私は授業の間も先にどうやって話そうか、何を話そうか悩んでいる。
 視線を感じてはいたが、いつもなら気にしておどおどしているが今日は気にしないようにすることにした。
 自分が悪いところなんてたくさん思いつくが、周りに邪魔になるようなことではないので私は迷惑をかけない程度に視線を無視することにする。
 そうするといつもより少し肩が軽くなった。
 少しの考え方でこんなに感じ方が違うのだと、感心している。

 お昼になってすぐに屋上に向かった。
 屋上のドアを開けると咲來はもう来ていて座って待っていた。
「歩楓、来るの早かったね。今日は何かいいことでもあった?」
 咲來がそう言ってくれることもなんだかうれしくなった。
 私はそんなに喜んでいる顔をしているのかな?
 でもそれほどうれしいのは事実だし、咲來に聞いてほしいけど迷惑かな?
 そんなことを考えていると咲來が弁当を食べている手を止めた。
「何か言いたいことあるの? 歩楓の話なら私すごく聞きたい‼話してくれる?」
 咲來がやさしく聞いてくれるので私は咲來に今思っていることを話したくなった。
「今日ね。矢部君とはまだ人前で話せなかったんだけど、会釈したら手を振ってくれたんだ」
 矢部君と話すことを咲來の報告したかったが、そこまではまだ私にはできない。
「よかったじゃん。それに声での会話じゃなかったけど手話でも人前で会話できるなんて成長しているじゃん」
 だけど少しのことでも咲來は聞いてくれて、喜んでくれるなら人まえで普通に話せるようになりたい。
 咲來とももっと普通に話したいな。
「そうかな? でもまだ矢部君とちゃんと人前で話せていないから迷惑と思われているかもしれない」
 上がっていたモチベーションも矢部君さんのことを考えると、モチベーションを下がってしまった。
 矢部君には迷惑しかかけていない。
 そんな私と話そうとしてくれているのに、話すことができないから矢部君さんも迷惑かもしれないと考えてしまう。
「大丈夫だって。矢部もそんなこと思ったらりしないし、そんなこと思ってる奴なら放課後話したりしないよ。それにそんな奴だったら私が許さないよ」
 咲來の顔がわかった。
 だけど私のことを考えてくれているのが伝わって、うれしく思えた。
 だけど昨日会ったことはなかなか話せなかった。
 それでも誰かに相談したいという気持ちもある。
「昨日のこと聞いてもいいかな? 朝話せなかったから」
 私が考えていることを気づいてくれるのがうれしい。
 だけど自分から言えないのが悔しかった。
 自分の話なのに、言葉にしようとすると言葉が出てこなくなる。
 それでも聞かれるとすぐに言葉が出てくるので、聞いてくれたことが本当にうれしかった。
「うん。昨日ねいつものように放課後話してたんだけど、帰りたくないって話になってコンビニに寄ったんだ」
 表情が緩んでいるのが自分でも感じた。
 咲來にきもいと言われないように手で顔を隠しながら、続きを話した。
「いい感じになってるじゃん。それで?コンビニで何か買ったの?」
 いい感じなのかはわからないけど、矢部君と寄り道できたことが話しながらうれしい気持ちになる。
 だけど買ったものまで聞かれるとは思っていなかった。
「お茶かったよ。矢部君は飲み物と肉まん買ってた」
「歩楓は何か食べ物飼わなかったの?」
 聞かれると思っていた。
 お金がない以外の言い訳も考えたが思いつかない。
 あまり考えていると怪しまれそうなので、素直に話すことにした。
「お金がなくて、買えなかった。それに私も食べたのは食べたんだよ、肉まん」
 もらったことは言わないつもりだったが、咲來の顔がだんだん怖くなったので話した。
 私が書く仕事しているのに怒ったのかな?
「ならよかったじゃん。矢部がそこで分けたことも聞かなかったら、今からでも矢部君のところに殴り込みに行くところだったよ。それで?」
 私は心の中で矢部君に謝った。
 咲來がこんなに手がすぐ出るとは思っていなかったので、言葉には気を付けようと思う。
「はじめは断ってたんだ。矢部君は気にかけてくれて、初めからいるって言ってたんだけど。途中でおなかがなっちゃって、結局もらうことになったんだ」
 話していても人前でおなかを鳴らしてことが恥ずかしかった。
 咲來には何回も聞かれてはいるが毎回恥ずかしい。
「珍しいね。夕方と言っても歩楓がおなか鳴らすなんてそのことが恥ずかしくて、矢部と二人で会うことが恥ずかしいんだ。それで……」
 私は言いにくそうに下を向いた。
 人に何かを頼むことになれていない私は、咲來の顔を見て頼むことができない。
 だけど二人でいるのは恥ずかしくて誰かと思った時に咲來をまっすぐに思いついて目の前にいる。
 だけど先を目の前にして、こんなことを頼んでいいのかと悩んだりもしている。
「私に何か頼みたいことがあるんだね。私にできることならやるよ」
 そういってくれることが泣くほどうれしかった。
 今ここでお泣きそうだったが、学校っていうのもあるが私が泣くことで咲來を困らせしまうかもしれない。
 そう思うとこれから頼むことも迷惑になるのではないかと考えてなかなか言葉が出てこなかった。
「どんなことでも言って。言いにくいことならメールでもいいし」
 そういわれると、咲來には頼っていいのかなと思えてきた。
 二人で会うより咲來に頼ろうと心が決まった
「今日の放課後、矢部君が来るかわからないんだけど一緒にいてくれないかな? 昨日のことが恥ずかしくてうまく話せる自信がないのだからお願いできないかな?」
 咲來はなんだか頼られてうれしそうな顔をしている。
 頼ってよかったのだと心から思えた。
「いいよ。今日は部活もないし、あんたたちがどんなこと話してるのかも聞きたいしね」
 頼みごとが終わると屋上を出た
 教室に着くとなんだか咲來にもう少し自分のことを話してみようかと思っていた。
(咲來とはこれまで以上に仲良くなれた気がする)
 今まで一緒にいてくれたけど、私が話せないことが多かったから、私だけが遠く感じていたのかも。
 昼休みが終わり先と私はそれぞれ教室に帰った。

 授業が始まって少しすると矢部君が私にしか聞こえない声で話しかけてきた。
「今日の放課後残れるかな?」
 私はうなずくことしかできなかった。
 昨日のことを思い出してすぐに目をそらした。
「わかった、今日も屋上で待ってるね」
 そういって矢部君は授業に向かった。
 矢部君に申し訳ないと思いつつ授業を聞く体制にする。
 それでも放課後は楽しみで仕方がない。
 だけど人前で話すことができない私は咲來がいることを矢部君君に言えないままでどこかで話すタイミングはないかと矢部君のほうを見ていた。
 そうすると、矢部君と目が合うことが度々あり、だんだんと恥ずかしくなりました。
 だけどどこかで言わないと思っているので、矢部君のほうを見るのでやはり目が合った。
(こんなに目が合うなんて変な人と思われるか? でも話そうとしても言葉が出ないし)
 放課後になるまでタイミングをうかがっていたが、自分の声が出るタイミングと話しかけれるタイミングが合わず放課後になった。

 矢部君は咲來に屋上に向かっており、咲來と矢部君が合うことなく矢部君が屋上に行き、咲來が私の教室に来た。
「お待たせ。矢部君は屋上にいるんだよね?」
 咲來を待っていると教室に迎えに来てくれた。
 屋上で話していることを知っている。
「そうだよ。……咲來、矢部君に咲來が来ること言えなかった」
 教室で話していたので言えるわけもなかった。
 だけど何かで伝えないと、急なことで申し訳なくなる。
「大丈夫だよ。心配そうな顔を無くても。何か言われたら、私が何とかしてあげる」
 私はここで自分がどんな顔をしているのかを知った。
 だけど先が言ってくれた言葉で少しはましになった。
 らしい。
そこから屋上に行くのに少し時間がかかったが、咲來がついてきてくれるので逃げずに迎えた。