「だから私も手伝うよ」

「え、でも加藤さん忘れ物取りに来ただけでしょ?」

「御上の指導係は私。だから最後までちゃんと付き合う」

それにこうなったら宇崎さんを見返すくらいのいい資料を作ってやる。私が指導係なのに無視して仕事を頼んでいたのも癪だ。


「加藤さんはかっこいいね」

「……別に嬉しくない」

「憧れる」

それを言うのなら、元々御上千香が持っているものの方が憧れる。
私がもっと綺麗な顔立ちをしていたら、なにか変わっていたのかもしれないとか……時々、本当に時々だけど思うことがある。


「あ、これはここのメーカーの参考にしたほうがいいよ」

気持ちを切り替えて、私は御上千香と共に誰にも求められていない資料を作ることに没頭した。



——十一時くらいになってようやく完成し、一通り見て満足する。


「終わったー!」

「加藤さん、手伝ってくれてありがとう」

これなら部長も驚くくらいのいい出来だ。私は助言をしたものの、御上千香が資料の構成や見やすさを考えたスタイリッシュなデザインで作成した。

……ちょっと悔しいけど、センスある。私が作る資料のフォーマットよりも、御上千香が作る資料は情報がわかりやすく頭に入ってくるデザインになっている。


「御上の力だよ」

私じゃない。これは彼のセンスと努力で出来たものだ。