「……ダサいのは私の方だ」
「え?」
「コスメの営業のくせにメイクは手抜きで、自分の外見に自信が持てなくて仕事に打ち込んで逃げてる」
彼氏ができたってすぐに振られてしまう。
つまらない。可愛げがない。女子力が低い。そんなことを言って、私から離れていってしまった。
本当にダサいのは、自分を良くするための努力を怠っている私だ。
「加藤さんは仕事に一生懸命でかっこいいよ」
「……仕事ができても、女としてはダメだってよく言われるよ」
「自分の幸せは自分で決めればいいんじゃないかな」
その言葉にわずかに目を見開くと、目尻にそっと指先が触れられる。
「目を閉じて」
戸惑いながらもそれに従って、ゆっくりと目を閉じた。
すぐ近くに御上千香がいることに緊張して呼吸をすることを躊躇ってしまう。
「恋愛とか結婚とか、仕事とかさ、人によって大事なものは違うし、誰もが同じ道をいく必要なんてないよ」
「……うん」
「自分の大事にしたいものを忘れずにいたらいいんだよ。だから加藤さんはダメなんかじゃない」
たぶん私はこういう言葉がずっと欲しかった。
このままでいいよって寄り添って、優しくされたかったのかもしれない。