「そう思っても、怖いんです……。京先輩……っ……」
「ん?」
「手を繋いでもいいですか?」
「俺で良ければ!」


ちょっ。

なんだか、ラブラブなカップルに出くわした幽霊の気分になってしまう。


驚かせたい気持ちはあるが、イチャイチャしたシーンに出くわしそうで、出るに出られないこの感覚。



幽霊も大変そうだ__


そんな事を考えていたら、私達が隠れている部屋に夢と京が入ってきたから、フラフラとした足取りで押し入れから姿を表した。



「きゃあ!!」



可愛らしい悲鳴を上げると、京に抱き着き「怖ぁい!」なんていっている夢。



「夢さん。よく見て下さい。明日菜さんですよ……」



冷静にそう言って、眼鏡をくいっと持ち上げた京はまんざらでも無さそうな表情で夢を見ている。



「帰りましょうか!」
「京先輩……。怖いから手を繋いでもいいですか?」
「はい!もちろん!!」



幽霊は、ラブラブなカップルが来たらいたたまれない気分になるだろう。

幽霊よりカップルの方が怖いという気持ちになってしまう。


早く帰りたい。


心底そう思っていると、京と夢が廃墟から出ていった音が聞こえた。