はっきり言って、あまりに恥ずかしくて今直ぐに逃げてしまいたい感覚に囚われる。



「そっかぁ……」



ここから、逃げ出したい__



「あのさ!」
「うん?」
「もう少ししたら、バレンタインだね……」



バレンタイン。

バレンタインに陸斗にチョコレートを渡していたのは、幼い頃。

大きくなってからも渡したいとは思ったが、照れ臭くて渡す事が出来なかった__



「そうだね……」



可愛い女の子なら、ここでなんと言うのだろう。

『チョコあげるよ』なんて、可愛いく言えるのかも知れないな。



「チョコレート欲しいんだけど……。こんぺいとうのお礼だと思って作ってよ」
「うん。いいよ……」



冷静に言葉を発したが、心臓はバクバク騒いでいる。

陸斗は私からのチョコレートを欲しがっているのだろうか。それとも、ただ単に食べたくなっただけだろうか。



「じゃあ、俺は帰るよ」



止めたいが、私にそんな権限は無い__

上手く甘える事すら出来ない、自分のヘタレっぷりにガックリしながら「またね!」と見送った。



♢♢♢
平和。

そう呼ぶのが適切な日常が続き、あっという間にバレンタインの前の日の夜がやってきた。