私は家へ帰ると背中の下あたりまであった髪を真ん中より上で切り落とし、残った髪を細いひもで縛り上げ、高い位置で結んだ。

そして着ていた着物を脱ぎ、胸にさらしを巻き平らにした。

衣装箪笥の中から父親の着物を取り出し、それに着替えた。

「あー、あー、あー。
これくらいなら少年だから声変わりしていないってことでいけるはず。」

今までほかのだれかに演じてきた私にとって男装することなど他愛もない話だった。

その日、母親には男装した理由を話すことなく、「聞かないで」とだけ答え、本当のことから逃げ、翌日を迎えた。