「あの、待ってください。
話があります。」

屯所に入ろうとしていたところをどうにか見つけ、私は大きな声で先ほどの男性を呼び止めた。

「さっきのやつか…
俺になんか用でもあるのか?」

「先ほどは助けていただき、ありがとうございました。

貴方様のお名前を教えていただけませんか。」

めんどくさそうにため息をついた後、その男性は自分の名前は斎藤一だと名乗った。

「なぜ、真剣を持っていらっしゃるのですか。」

「なぜって、今の時代には刀がなくては生きていけないからだよ。
あんたも聞きたいことがそれだけならさっさとどっかに行きな。」

迷惑そうにあしらわれているが、ここでくじけるわけにはいかない。

そう思った私は目の前の男性に質問をした。

「今、西暦何年ですか?」

「西洋の暦なんて知らん。
今は、文久3年だ。」

文久3年という暦を聞いた私は驚きを隠せなかった。

今は平成23年なはずなのに、幕末へタイムスリップしたということになる。

「剣に覚えのあるものを募集していると聞きます。
私を新選組へ入隊させてください。」

「お前は馬鹿か。
俺たち新選組は女人禁制だ。

女のお前を入隊させたら、俺が副長に殺される。
悪いことは言わない、さっさと失せろ。」

「もし、私が女ということがばれなければいいっていうことですよね。
明日、また会っていただけませんか。

そしてその姿に納得した場合、私を新選組に入隊させてください。」

その言葉を聞いた斎藤一はにやりと笑った。

「おもしれぇ。
俺を納得させることができたなら、お前の入隊を考えてやってもいい。

明日、お前の家の食事処に行く。
それでどうするか、考えてやる。」

斎藤一はそれだけ言い残すと屯所の中へ入っていった。