「名前を聞けなかったけど、斎藤一ではない人か…
他にこのシーンをやる新選組の人いなかった気がするけれど…」

昨日同様新選組隊士を目で追い見送ったが、いつになってもカットの合図がかからなかった。

「さっきからどうしてカットがかからないの…
私をドッキリにはめようとしているの…?

もう、出てきてください。
どこかで撮っているのなら、もう十分じゃないですか?」

私がそう言っても誰も出てこなかった。

まだ続けるつもりなのかと思った矢先、先ほど倒れたお武家様がいつになっても起き上がらないのが気になった。

「あの、口に土はいりませんか?
ずっとうつぶせだと息がしづらいと思うので、あおむけとかになったほうが…」

お武家様の肩を触ったとき、異変に気がついた。

まるで生気を失ったようにほんの少しだけ冷たく、何よりも斬られた背中からはまだ血が出ていて、鉄臭さが鼻についた。

「もしかして、本当に死んでる?」

そう思った私は先ほどこのお武家様を斬った新選組隊士が歩いて行ったほうに向かい走り出した。