中に入ってきたのは今まで見たことのない人だった。

こんな人、新選組の隊士にいたっけ?

人のことは言えないけれど、この人が剣を持っているのを想像できないなと思っていると、その男性が私に声をかけてきた。

「僕の名前は松本良順です。

一応新選組のお抱え医師だけれど、杉崎君は今までけがをしたことがなかったから会うのは初めてだよね。

僕は杉崎君のこと前から知っていたけれど。

前に杉崎君が心をさまよわせたときに何もできなくて歯がゆい思いをしたから…

ってそんなことを話している場合じゃなかった。

意識が戻ったんだね。
よかった。

ずっと斎藤君は心配していたんだよ。

僕が背中の傷はそんなに深くないから目を覚ますって言ったのに、まだ目を覚まさないって。」

この朗らかなしゃべり方をする人は新選組のお抱え医師だったのかと納得しつつ、話を聞いていると、最後にとんでもない爆弾を投下してきたのだ。

背中の傷の具合を知っているということはもしかして…

今頃は私が女だったってことがばれれて、いつ除隊させるか…もしかしたら欺いていたということで切腹を命じられるのかな…

私の顔がどんどん悪くなっていくので、私が何を考えているのかがわかったのだろう。

「心配しないで大丈夫だよ。
僕は医者だから治療をする上で知った秘密は他言してはならないっていう決まりがあるから。

君の秘密は知ってしまったけれど、局長にも誰にも言っていないから。」

その言葉を聞き、私は心の底から安堵した。

今まで気を付けていたのにばれてしまったのかと不安に思っていた心が晴れ晴れしたような気がした。

「傷の様子を確認したいから背中を見せてくれる?

意識も戻って普通にしゃべれるようになってるから感染症とかの心配はいらないだろうけれど、もしかしたら傷が残ってしまうかもしれない。」

背中の傷が残ってしまうかもしれないと言われたけど、私別にそれでもいいやと思っていた。

この傷は勲章だって思えば何も嫌ではなかった。

私は斎藤先生と松本先生に支えられ起き上がると、着物を脱ぎ、さらしを外した。

背中を松本先生の方へ向くと、松本先生は私の身体にまかれていた包帯をとり傷の状態を確認した。

そして傷のふさがり具合などを確認すると軟膏を塗り、また包帯をきつく巻いてくれた。

もう服を着ていいと言われたので、私はさらしを巻こうと畳の上に置いてあるさらしに手を伸ばした瞬間、この部屋にいる誰もが予想していなかった事態が起きた。