医術の心得がない斎藤先生ができることは意識が戻るように祈ることだけだった。

斎藤先生はただ私の汗を拭き、意識が戻ることを願っていた。

日が暮れようとしている頃、斎藤先生の部屋に松本先生が薬と替えの包帯をもって訪ねてきた。

松本先生以外に誰もいないことを確認すると斎藤先生は部屋の中へ招き入れた。

「局長には、杉崎が斬られたのは自分のせいだという自責の念を感じ、目を覚ますまでそばにいたいから、他の隊士と同じところにいたのでは治療の邪魔になってしまうと考えてこの部屋で特別に治療をすることになった、と報告しておいた。

今、何を知ったとしても僕は驚かないし、誰にも知ったことを報告しない。

彼、いや彼女というべきか。

杉崎君は女性なのかい?

それがばれるのを恐れてこの部屋に連れて来たいと言ったのかい?」

松本先生は何もかもお見通しだった。

そしてわかっていたうえでこの部屋で治療をすることを許可したのだった。

「患部に薬を塗った後に教えてほしい。

なぜ男だと偽ってまで杉崎君はここにいるのか、なぜそれを知ってて君は黙認しているのか。」

松本先生は一切それを咎めるとこはせず、まずは治療をすると言って布団から起き上がらせ、着物やさらしを外し、何も言わずに刀傷に効く軟膏を塗った。

そして再び包帯とさらしを巻き、着物を着せ布団に私を寝かしつけたあと、斎藤先生の方に向き直った。

「教えてくれるかい?
なぜ杉崎君がここまでして新選組にいるのかを。」