そして何よりも御陵衛士に斬られてしまい戦線離脱をしたものは多くいてもすぐに屯所に戻って治療をすれば助かる見込みのものも多くおり、治療を優先させることにしたためだった。

これが苦渋の決断であるということは撤退を決めた近藤先生が一番よくわかっていた。

しかし新選組の局長として、多くの隊士の命を預かるものとして、ここは最善だと思われる結論を導くしかなかったのだった。

近藤先生の下した決断にあからさまに嫌な表情をする隊士がいたのだが、彼らに向け土方先生と沖田先生が言葉を発すると嫌な表情をするのをやめた。

「死にに行きてぇやつはさっさと追いかければいい。

自分の追い求める理想に向かって犬死にしてこい。
俺は止めねえから、さっさと行け!」

「今は局長の言う通り撤退するべきだ。

確かに追いかけたいという気持ちがわからなくもない。

でも局長は、副局長もきついことを言っているけれど、君たちを死なせたくないから言っているんだ。

この決断を下すことがどれだけ辛いことなのか考えてほしい。

それでも、局長や副局長、俺を悲しませてもいいというのであれば覚悟を決めてから行きなさい。

一番俺たちが悲しむことは、自分の命を無駄にすることだということだけはわかってほしい。」

厳しいことを言いながらも隊士のことを考えている土方先生と、悲しそうな顔をしながら話す沖田先生に背を向けられる隊士などいなかった。

誰一人として御陵衛士を追いかけることはしなかった。