斎藤先生は今も目の前の相手と戦っており、どちらかの刀が相手の身体を傷つけたのだろう、斎藤先生のだんだら羽織には血が飛び散ったような跡がついていた。

この時斎藤先生はかなり本気を出していた。

左手で刀を構え、普段は見せることのない余裕のない表情をしていたのだから。

私も必死に斎藤先生の援護を続けていたのだがいまだ決着はつかず、互いに疲れ始めていた。

先に動いたのは斎藤先生だった。

地面を蹴り飛ばし、相手の右の脇腹めがけて太刀を振るったのだ。

近くで見ていた私は「逝った」と思い少し安心した。

しかし相手は重傷を負いながらもまだ息をしており、一瞬の隙を見て逃げ出したのだ。

まさか斬られている状態で逃げると思っていなかった私はすぐに追いかけようとしたのだが、斎藤先生に止められた。

「深く斬ったから追いかけなくていい。

今はこの場にいる奴らを仕留めることの方が重要だ。」


確かに地面に血だまりができるほど相手は深く斬られていたので、逃げたところでどこかで倒れているだろうと想像できる。

私は斎藤先生の指示に従い、追いかけることを止め、他の隊士に合流しようと後ろを振り返った。