しばらく私と斎藤先生の打ち合いが続き、道場内は何とも言えないような空気が流れていた。

私は今出せる限りの本気を出していたのだが斎藤先生はまだ余裕な表情をしていた。

それは構えからも見て取れるほどだった。

斎藤先生は本気の時だけは刀を構えるときに左手を上にするのに、今は右手を上にして構えていたのだ。

「やっぱり、斎藤先生は強いですね。

斎藤先生は本気じゃないのに私は太刀打ちできない…」

「病み上がりのお前に本気は出せないし、いくら手加減してるとしても病み上がりのお前に負けたら俺の面目がつぶれるだろ。」

私は斎藤先生の気がそれた瞬間を見逃さなかった。

「沖田先生、離れて!!」

そう言うのと同時に私は全力で刀を下から上へ振り上げた。

「うわっ…

そこまで!
両者離れて!」

沖田先生の合図により私たちの戦いは終わった。

刀と小太刀を鞘へしまっていると目の前から同じように刀を鞘にしまう鬼が、いや斎藤先生が私に近づいてきた。

「俺が何を言いたいのかわかるよね?
杉崎君?」

疑問形で問われることがこんなにも怖いと思ったことは今まで生きてきたなかで思ったことがなかった。

「すみません!
でも、あれをしないと斎藤先生に勝てなかったから…」

「俺が言ったこと忘れてるんだ?

原田から三条大橋のことも聞いてるし、今回もまた?」

終始疑問形の問いかけをしてくる斎藤先生は本当に怖かった。

「もうしません!
仲間に離れてなんて言いません!

だから、許してください…」

「次はもう許さないから。

次やったらとりあえず三番隊から外させる。」

斎藤先生が怒るのももっともだった。

私は斎藤先生に禁止されていたことをしてしまったのだから。