夜の街を軽快に飛ばすSUV車。鼻歌雑じりの運転手と隣り合ってるのが居たたまれない。そもそも助手席がこんなにも落ち着かない。習慣て怖い。

しかも柳さんは藍色のTシャツの上に柄シャツ羽織って、ハーフパンツにサンダル。無造作な髪は半乾きだし、家族でも恋人でもない相手に無防備すぎるでしょ・・・!

なるべく視界から()けてるのも、お構いなしで話しかけてくる(ひと)

「アリスちゃんがさ。梓ちゃんを置いて帰るから好きにしていいけどその代わり、可愛い妹が恨み言ひとつでも言ったら一寸刻みにしてなぶり殺すって。笑いながら脅すんだよねぇオレを」

「?!」

思いきり首が(よじ)れた、柳さんへと。きっとお手洗いに立った時だ。秋生ちゃんらしすぎる置き土産。

「梓ちゃんにはどう見える?」

呟いた横顔が儚そうで。口ごもった。

「オレは赤ずきんちゃんを食べたがってるただの狼少年?」

揚げ足とって言い返さなかったのは。・・・そうじゃないって思ってるから。