「お兄は勝手にキスなんかしませんから」

なけなしの意地を張り、あさってを向きながら素っ気なく。飲み干したブルー・ムーンは味もよく分かんないで。

「淳人も普通の男だったんだけどねぇ、梓ちゃんのいないとこじゃ」

「でも柳さんとは違います・・・ッ」

「言われちゃったなぁ」

クスクスと余裕の笑顔がことさら口惜しい。

うっかりペースに乗せられちゃダメよ梓。こんな女を惑わす危険生物、相手にしてられるほどヒマじゃないの。どうせ拾うなら。もっとお兄みたいに凛々しくて、決めたら一筋で強くて優しい男。

・・・嫌なの。
あたしだけを欲しがらない(ひと)は。
嫌なの。
刹那だけを欲しがる(ひと)は。

「オレと淳人がどう違うのか、確かめていいよ好きなだけ」

きっと酔ってる。思わず振り向いてしまったら。その甘く艶めかしい眼差しに心臓ごと熔かされそう、・・・だなんて。