寂しがって。・・・そんなこともあったか知れない。

重ね合わせるように思い出を手繰る。ランドセルを背負い始めた頃は、お兄はとうに中学生。遊び盛りで帰りは遅かったし、アレがしたいコレがしたいって、二十歳(ハタチ)そこそこの志田を振り回してたのは鮮明に。

あの頃はお客さんが多かったのも憶えてる。お母さんと一緒に挨拶したあと、怖そうなオジサンがニコニコして縫いぐるみくれたり、ポチ袋を握らせたり。

オジサンじゃない若い(ひと)もたまに雑ざってた。志田との間柄を考えたら、柳さんと会ってない方がおかしなくらい。点と点が繋がってやっと線に。

「もしかして、お兄の代わりになる約束って子供の時のあたしと・・・ですか?」

「夏休みなのに淳人に置いてきぼりにされたらしくてね。裏庭の隅っこでむくれてた可愛い赤ずきんちゃんをオレが先に見つけたんだよなぁ」

クスクス一人笑いを浮かべて種を明かしてくれた。

「『おにいちゃんなんかキライ』って泣くから、そんな悪いお兄ちゃんならオレと取り替えっこする?って訊いたの憶えてない?」

ボックスから引き抜いた煙草を、咥える前に目線で訊ねてから火を点け、柳さんは白い吐息を緩く逃してく。